彼は誰時

八木邸の広間には早めの夕食が並べられていた。
上座には近藤、その左右に山南と土方が座っており、壁際には藤堂、永倉、原田が廊下側に斎藤、沖田、井上が座っている。

「そういえば、龍之介の奴はどうしたんだ?」

井吹の姿が見えないことに気づいた永倉が藤堂に訪ねた。

「声はかけてきたんだけど夕飯はいらねえってさ」

「そうか」

そう言って何か考えるような仕草をする永倉に近藤は声をかける。

「ところで永倉君」

「おう?」

「街の様子はどうだ?」

「ああ、柄の悪い連中があちこちで暴れてやがんのを見かけたぜ」

そう応える永倉に原田も

「外を出歩くときは、なるべく一人にならない方がいいだろうな。いつ不逞浪士に斬り殺されてもおかしくねえだろうし、町方も頼りにゃならねえ」

財布を取り上げられた商人を思い出し、井吹が意外に強かったことを思い出す。

「しかし、龍之介があんなに強いとは思わなかったよな」

永倉も同じことを思い出したのか感慨深げに話す。

「そうそう!一人で三人もあっという間に倒しちゃうんだもんな!」

「へぇ?」

藤堂の言葉に沖田が興味を持ったように目を細めた。

「何があったんだ?」

土方の言葉に藤堂は、今日見たことを話す。

「でも、龍之介の奴なんで刀を抜かなかったのかな」

「さあな。龍之介には龍之介の事情があるんだろうよ」

平助の言葉に原田が応える。

「そういえば、あいつ拾われる前の記憶がないって言ってたよな」

「なんと!それは本当か!?」

永倉の言葉に驚いたように声を上げる近藤に永倉は視線を向け頷く。

「ああ、でも全部って訳じゃないと思うぜ」

「そうだろうな」

土方は考えるように頷いた。

「全部忘れてたら、その不逞浪士を倒そうとしなかっただろうしな」

「あいつ、一体何者なんだろうな……」

ポツリと呟く原田に渋面を作り土方は口を開いた。

「どんな奴だろうと関係ねえ。だが……警戒は怠るな」

その言葉にその場の全員が頷いた。

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