それから数日後
今の京は、かなり蒸し暑い。
外の空気を入れるために、障子戸を全開にしてるが、ろくに風か吹き込んで来ない。
その為、私は暑いから扇げと言う芹沢さんに、汗だくになりながら一生懸命団扇で扇いでいた。
「芹沢さん、近藤です」
その時、廊下から声がかかる。
「入れ」
芹沢さんの返事があってから、障子が開かれ、土方さんと山南さんを伴った近藤さんが「失礼します」と声をかけながら入ってきた。
三人は障子の前に並んで座る。
「お呼びとのことですが」
「うむ」
山南さんの言葉に、芹沢さんは頷く。
芹沢さんの隣に座っている新見さんが得意げに口を開いた。
「実は浪士組の人材不足を解決する妙案があるのですよ」
「ほぉ!それは如何様な?」
近藤が驚いたように問うと芹沢さんは目で新見さんに先を促す。
新見さんは、下座に控えていた剃髪の男を手で示しながら
「そちらは、幕府より使わされた蘭方医の、雪村綱道殿です」
「幕府から?」
山南さんは驚きを隠せない様子だった。
私が来る前から部屋にいて、かなり気になってた人物は蘭方医なのか。
蘭方医って、医者だよね?
なんで、そんな人が……?
と私は思いながら、耳だけそちらに傾け、相変わらず風を芹沢さんに送り続ける。
「ええ。私は幕命により、予てよりこの雪村殿と準備を進めてきました」
「予てよりってのは、いつからだ?」
「予てより、です」
勝ち誇ったような新見さんに、ムッとする土方さん。
幕命って……
私、ここで聞いてて大丈夫なのかな?
そろそろ出て行った方がいいんじゃ……?
これから、私が聞いてはいけない話をしそうな気がしてソワソワとする。
完璧に部屋を出るタイミングを失ったよ……。
「それで、妙案というのは?」
穏やかな口調で近藤さんが芹沢さんに訪ねる。
ヤバイ。絶対にヤバイ!
そう思った私は扇ぐ手を止め立ち上がる。
急に立ち上がった事で、そこにいる全員から私に視線が集まった。
「お、俺がいたら邪魔だろうから席を外す。いいよな、芹沢さん?」
どもりながらも、なんとか言い終えた。
芹沢さんを窺うように見れば、さっさと出て行けというように顎をしゃくった。
それを見てから私はそそくさと部屋を出る。
ホッと胸を撫で下ろすと共に、言いようのない胸騒ぎを抱きながら、私は皆がいるだろう八木邸へと向かったのだった。
夜になっても、近藤さん達は戻ってくる気配が無く、広間で待たされている皆は、落ち着かない時を過ごしていた。
「長いな……近藤さん達、何話してんだ?」
平助が気になる様子で呟く。
「幕命か……きなくせえな」
永倉の呟きに、井上さんと斎藤は落ち着いた様子で応える。
「勇さんやトシさんが居るんだ。悪いようにはならないと思うが……」
「お二人にお任せしておけばいい」
本当にそうなのかな……?
言い知れぬ胸騒ぎが落ち着きもせず、不安が増して行く。
"今夜、何かが起こる"
不意にそんな言葉が頭に浮かんだ瞬間――。
「うぐ、ぐぁあああああっ!」
男の悲鳴が前川邸の方から響き渡る。
「なんだよ、今の悲鳴!」
「ただごとじゃねえ!」
皆はハッと顔を上げ、その声が聞こえた前川邸へ走り出した。
私も、その流れのまま後に続く。
平助、永倉が前川邸の裏口に最初に到着し、平助が入り口を開けようとしている所に、沖田と斎藤、井上さんが到着し、原田の後に私がやっと追い付く。
「あ、あれ。開かねえんだけど」
中から閂が下ろされているようで、平助が戸惑ったように声を上げた。
「くそっ!どうなってやがるんだ、こいつは!!」
「トシ!山南くん!外へ出すな!」
「ええ!」
刀と刀がぶつかる音、そして土方さん近藤さん山南さんの切羽詰まった声が響く。
「どけ、平助!」
焦れた永倉が力任せに扉を破ると、突入する。
沖田、平助が後を追って駆け込む。
「源さんはここを頼みます」
「ああ」
「左之は、表の方を固めてくれ」
「おう!」
斎藤はてきぱきと持ち場を割り振り、邸内へ駆け込む。
私が行ってもきっと、足手まといになるだけだ。
だけど……。
しばらく私は逡巡する。
「……おまえ、その刀を使う覚悟はできたのか?」
「え?」
「刀を抜いて、人を斬る覚悟がねえんなら戻ってろ。半端な覚悟しか持ってねえ奴が戦いの場に出ても、邪魔になるだけだ」
ここからはゲームと同じ様に選択肢によって話が変わってきます。
大きな分岐点だったり、ただ話が違うだけだったり…になる予定。
管理人の都合で、どの√に行っても最後は同じ…とかになる可能性もあります(--;)
→
「………」
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「わかった」