「………」
そんなの出来るはずもない。
無言で原田を見つめる。
だけど……
私は、それでも自分だけ安全な所で待ってるなんてしたくなかった。
皆が戦っているのに、私だけ安全な所にいるわけにはいかない。
目で私の気持ちを読み取ったのか、原田はため息をつくと
「……油断だけは、するんじゃねえぞ」
「うん!」
忠告と呼ぶには親しみを込めた声音でポンポンと私の頭を叩きながら、そう言ってくれた。
原田と共に、表口まで走る。
屋敷の中からは、誰かの声や何かが当たって壊れたような物音が激しくしている。
あんなに剣術に秀でている人達が、苦戦している……?
どんな強者だって、この人達が束になってかかったら、造作もなく倒せると思ってた。
なのに
「ぐわぁ!!!」
突然板戸が勢いよく破られ、中から永倉が吹き飛ばされ、そのまま地面に背中を打ちつかせる。
「新八!」
「永倉!」
原田と私は同時に叫ぶ。
「ぐ、ぅ……」
永倉は起き上がることができないようだ。
駆け寄って、大丈夫か調べたいけど、永倉を攻撃した敵が近くにいるのだ。
そんな容易なことはするべきじゃない。
原田は槍を握りしめると、屋敷の中の不気味にふたつの目が光っている暗がりに近づいた。
私もそちらを睨み付ける。
「気をつけろ、左之!」
「そいつ、普通じゃないよ!」
建物から出てきた斎藤、沖田も息を弾ませながら叫ぶ。
と、闇から男が走り出て来た。
男の姿を見て私は驚いた。
老人のような白髪、そして理性の欠片もないギラギラ光る赤い瞳――。
その男は、脇差を振りかざしながら大きく跳躍し、原田が攻撃した槍の穂先を弾くと難なく着地した。
男が振り返ると同時に原田は、その左上腕を刺し貫いた。
これなら、腕は使えなくなるはずだ。
そう思ったのも、つかの間、男は痛がるでもなく槍の柄を掴み原田を宙高く浮かせた。
「左之さん!」
駆けつけた平助が叫ぶ。
男は原田を振り落とすと、自分で槍を引き抜く。
血飛沫が飛んだと思うと、その傷口はたちまちのうちに癒えて塞がってしまった。
「傷が……!」
平助も斎藤も沖田も目をみはり、永倉の近くに落とされた原田が呆然と呟く。
「く、けけけけけ!!」
男は狂ったように笑いながら、ゆっくりと私を見た。
赤い瞳と目が合う。
その瞬間、私は無意識に腰にある刀を抜いて構えていた。
何故か、その男が泣いているように、私には見えた。
そこからスローモーションのように全てがゆっくりと動き出す。
脇差をめちゃくちゃに振り回しながら、私に向かって男は跳躍する。
<……助けて……死にたくない……>
男から、そんな声なき声が聞こえる気がする。
なんだか、それが悲しくて泣き出したい気分になった。
「逃げろ、龍之介!!」
原田の叫び声。
沖田がこちらに向かって地を蹴ったのが、私の視界の端に捉えた。
でも、きっと誰も間に合わない。
殺されそうになってるのに、私はかなり冷静だった。
男はもう目の前まで、迫ってきた。
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そのまま刀を構える
→
避ける