彼は誰時
どれぐらい経っただろうか。
頭を使いすぎてぼけっとしていると、誰かがこの部屋に近づいてくる気配がした。
平助だろうか。と思っている所にこの部屋の障子が開いた。
起き上がろうと体を動かす。
「あ、こら!まだ傷の具合がよくないんだから」
そう言いながら、穏和そうな男が部屋に入ってくる。
布団に寝たままなんて失礼だと思ったが、言葉に甘えて起こしかけた体を元に戻した。
「藤堂君が君が目を覚ましたと言ってたんでね、お粥を貰って持ってきたんだ。食べられるかい?」
井上源三郎と名乗った男は、湯気立つ鍋を軽く上げるしぐさをすると、枕元までやって来た。
井上さんかぁ。いい人そうだ。
そんな事を思いながら、その美味しそうな匂いに口内に唾液が溜まる。
そういえば、物凄くお腹が空いた。
私が頷くと、井上さんは食べられる様に体を起き上がらせてくれて支えてくれた。
「あの、ありがとうございます」
そう言うと井上さんはにっこり笑って「どういたしまして。早く良くなるといいね」と言った。
「はい。…いただきます」
そういえば、まだ平助にお礼を言っていなかった。
今度会ったら必ず言おう。
熱々としたお粥を口に運びながら、そんな事を思った。
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