彼は誰時

平助が私の世話係になったのか、怪我の治療やご飯の世話をしてくれるようになった。
今は当たり前に治療してもらっているが、最初はかなり戸惑った。



「へ、平助!ちょっと待って!」

にじり寄る平助に待てと手を出す。

「痛くしないから大丈夫だって!」

なおも言いながら平助は私に近づいてくる。

「そういう問題じゃないんだっ!」

「いいから脱げよ!」

平助はガシッと襟首を掴んで脱がそうとするが、私はなんとか阻止しようとする。

「なに恥ずかしがってるんだよ!?」

いやいやと私は首を振り抵抗する。

「じ、自分で出来るから!」

「そんな体じゃ無理だって!オレに任せろよ!」

もみ合っているうちに気付けば、天井が真上に見え平助が覆いかぶさるように腕を押さえつけている。

「男同士なんだし問題ねえだろ!?」

いやいやいや。何この態勢!?
なんでこんな押し倒された感じになってんの!?
うわうわと私は取り乱すしかない。

「いいから大人しくしてろ!」

「わ、わかった!わかったから退いてくれ!」

叫ぶように言うと平助はやっと上から退いてくれた。
はあ。顔が熱いし心臓に悪い。
バクバクと心臓がうるさい。
体は男でも心は乙女なのよ。平助。
顔は熱いが赤くなってない事を祈りながら平静を装う。
私は男。私は男。体は男。自分で言い聞かせながら寝巻を脱ぎ上半身裸になると、平助はペタペタと背中に薬を塗りだした。
薬の冷たさにビクリと肩を震わすと平助が心配そうに見上げて「痛いか?」と聞いてきた。

「いや、大丈夫だ」

しかし、なんでこんなにも傷だらけなのだろう。
私には、理由がわからないけど痛いものは痛い。
何も持ってなかった事からして物取りにでも遭ったのだろう。
というか、なんでここに居るんだったか。

『生きたいか?』

その時、ふいに野太い声が頭に響き蘇る記憶。
ああ、私はあの男に助けて貰ったのか。
手際よく晒を巻いてくれる平助に感心しながらも口を開く。

「そういえば、お礼をまだ言ってなかったよな。ありがとな平助」

その言葉に平助は笑って「たいしたことないって」と言った。
しかし意識してないと、ついつい女言葉になりそうになる。
慣れるまでが大変そうだ。

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