9、帰れなくてもいい


「これで、七人全員揃ったんだな!」

嬉しそうに藤堂が笑いながら井吹の肩を叩いた。

「ああ」
「なんだよ。なんだか嬉しそうじゃねえな?疲れたか?」

元気のない井吹に、心配そうに永倉も混じる。

「土方さんには言っといてやるから、部屋で休んどけ」

原田も眉を寄せ、新しく用意された部屋に井吹を送り出した。
井吹は言葉に甘えることにして、部屋に入った途端、ぼふんとベッドに倒れこんだ。

「(……七星士が全員揃った)」

やっと家に帰れる。嬉しいはずなのに、なぜか心が沈むばかり。

「(どうしたんだろ……俺)」

井吹はため息をつきながら、ごろんと身体を仰向けにすると、腕で目を覆いながら瞳を閉じた。

****

男を蹴りあげたのは井吹であった。
井吹に蹴られたことで、男に隙が生まれた。
そのチャンスを土方らが見逃すはずもなく、あっという間に男は拘束されたのだ。

「大丈夫か?」
「!」

その声は井吹が鏡に閉じ込められている時に聞こえた声だった。
そちらに顔を向けると、心配そうに、こちらを見ている紫色の瞳と目がかち合った。

「ああ、平気だ」

井吹の言葉に良かったと彼は頷く。

「あんた、もしかして…」
「ああ、俺は山崎丞、七星士だ」

話を聞いてみれば、山崎と一緒にいた男も七星士で斎藤一という名だということが分かった。
しかも、斎藤は土方と沖田の旧友らしく話に花を咲かせている。
そして冒頭へと戻る。

****

「井吹はどうした?」

「ああ、龍之介なら疲れてたみたいだから、部屋で休ませてるぜ」

ぞろぞろと皆を連れて近藤に報告とこれからを決める為、歩き出していた土方がふと周りを見渡して尋ねた。

「そうか」

土方は軽く頷くと、原田に目をやった。

「また、何かがあったらたまったもんじゃねえ、原田一応ついててやれ」

「はいよ」

一見、面倒事をと忌々しげに聞こえるような土方の言い方だったが、言葉の端には井吹への心配が垣間見える。
その事に原田は気付いていたが何も言わず、軽く肩をすくめて答え、踵を返して井吹がいる部屋へと歩き出した。


「おーい、龍之介?」

部屋の外から声を掛けるが返事はない。

「入るぞ?」

遠慮なく、扉を開けると寝具の上に仰向けで寝っ転がっている井吹が目に入り、ドキリとする。
目を覆うように腕を乗せて寝ている姿はまるで泣いているようで。

「龍之介?」

原田は近付きながら声を掛けると井吹は微かに唸り身動ぎをした。

「ん……はらだ?」

腕を取り払い、こちらに向けた目が赤くなっていないことや、泣いていた様子がないことに原田はホッとする。

「悪い、寝てたか?」

「いや、大丈夫だ」

なんだかぼうっとしたような反応だ。

「どうした?」

井吹は虚を衝かれたような表情を原田に向けると、プイッと顔を背ける。

「なんでもない」

そりゃあ、なにかありますって顔だろうが。
原田はそう思うものの、無理に聞き出そうとはしなかった。
原田は井吹の額に手を当て「熱はねえな」と呟き、そのまま目を覆った。

「……原田の手、冷たくて気持ちいいな……」

はぁ、と力を抜く井吹に原田はなんとも言えない気分になった。

「…俺がついていてやるから、今は寝とけ。疲れてるだろ」

「うん」

しばらくそのまま手をあてたままでいると、

「…原田」

「ん?」

「ありがと…」

そう言ったかと思うと、すうすうと安らかな寝息が井吹から聞こえてきた。
なんだかんだいって、疲れがピークだったのだろう。

「ったく、少しは警戒しろ」

無防備に眠る井吹の顔の横に手を置き、上から覗き込むと原田はため息を落とす。

「だから、余計に」

放っておけねぇよ。

ぎしりと寝具が軋んだ。



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私の中で、ここの龍之介は、変に意地っ張りというか…自分の気持ちがはっきりしてないと言わない人だと思ってます。
なので、原田さんに聞かれても答えませんでした。
そして変に素直。
こういう場面でサラッとお礼言っちゃったりする龍之介って可愛いと思う。
私の趣味丸出しです。
最後に原田さんは龍之介に何かしたのか…。
読者の皆様におまかせいたします。

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