7、化け物と対峙


彼――井吹の胸ぐらを掴んだ男は、土方歳三という名前で七星士の一人。
しかも、巫女……つまり井吹がこちらの世界に来たのが分かった人だということが判明した。
今、井吹が使っている部屋の近くに原田達の部屋を用意したそうで、土方と共に皆でぞろぞろと歩く。

「へえ。あんたも七星士だったのか」

「なあ……その、七星士とか、巫女とかなんだ?」

井吹が、この人が前に近藤が言っていた、もう一人だったのかと思いながら呟くと、今まで黙っていた藤堂が疑問を挟んだ。

「おめえら自覚がねえのか?」

「何の事だか、さっぱり」

三人は顔を見合わせて首を振る。
その様子に仕方ないというように、土方が伝説と七星士の事を話す。

「何があっても巫女を守るのが七星士だ」

「なるほどな。要するに俺たちは、こいつを守ればいい訳だな」

ポンと井吹の頭を叩き、ニヤリと原田は笑う。
永倉と藤堂が顔を見合わせて、面白い事を思い付いたというようにニヤニヤ笑いながら井吹を見た。

「しょうがねえから守ってやるよ」

「龍之介は、オレらがいねえと駄目だもんな」

「んなわけあるか!」

永倉、藤堂と続く言葉に井吹は噛み付く。

「へえ。じゃあ、俺達は協力しなくていいんだな?」

原田が追い打ちをかける。

「それは……っ、」

言葉に窮する井吹を三人は意地悪な笑みを浮かべながら見る。

「〜〜っ」

「あ?なんだって?」

ゴニョゴニョと俯いて喋る井吹に、永倉が聞き返す。

「もう、その辺にしておけ」

土方が口を挟むと同時に、井吹は真っ赤に染めた顔をバッと上げ

「必要だって言ってんだ、馬鹿!」

叫ぶと脱兎の如く駆け出した。

「あー。からかい過ぎたか」

「新八っつぁん、やり過ぎだよ」

「俺のせいかよ!?」

ぎゃいぎゃいと言い合って騒ぐ三人の耳にプツンと何かが切れる音が聞こた。
恐る恐る元凶をたどれば、そこには肩を震わせる土方が。

「てめえら、いい加減にしろ!!」

青筋を浮かべて怒り狂う姿は般若のようであった。



「くそっ、あいつらぁ〜!」

部屋に入るなり、井吹は悪態をつく。

「でも、七星士が三人集まった。残りはあと二人か」

そう呟いた時、

「まだ集まってないか」

知らない声が響く。

「誰だ!?」

振り返ると、禿げた……
いや、頭を剃り上げた男が井吹の部屋の中にいた。

「(いつの間に!?)」

気配など全くしなかった。
動揺する井吹に、男はニヤリと笑う。

「集まっていないなら、丁度いい。巫女、その命頂戴する!いけ!」

その男の後ろから、武器を持った男たちがぞろぞろと部屋に侵入する。

「な、なんだよ……こいつら……!」

姿、形は人間そのものなのに、髪は老人のように白く、血の様に真っ赤な瞳は、理性なんてものが一切ない……ただの化け物。

「(怖い……)」

井吹は一歩、一歩と後退りして距離を取るが、その分相手も距離を詰めてくる。

「あ、」

とん、と背中に壁が当たる感触で、井吹は追い詰められたことを知った。
化け物に囲まれて前にも横にも逃げられない。

「巫女、観念しろ」

もう駄目だ
来るであろう衝撃に備えて、ぎゅっと目を瞑る。

「そこまでだ」

その声に、井吹は反応して顔を上げる。

「やめてよね。その子を苛めていいのは、僕だけなんだから」

目にも止まらぬ速さで、その人物は、化け物達を斬り倒す。

「土方さん、沖田……!」

「早速、俺たちの出番ってか」

「直ぐ、面倒事に巻き込まれるみたいだな。俺たちの巫女様は」

「やっぱり、龍之介はオレたちがいねえとダメみてえだな!」

「永倉、原田、平助!」

次々に、化け物を倒していく、仲間達。
その事に、井吹の気が抜けたのは確かで。
気付けば、あの謎の男が、こちらに大きな丸い鏡を向けながら、何やら呪文を唱えていた。

「井吹!!」

それにいち早く気付いた土方が、井吹に駆け寄りながら手を伸ばす。
が、あと少しで届くという所で、土方の手は虚しくも空を切るだけだった。


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