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気が付くと、茜は道の真ん中に大の字で倒れていた。
服は、お風呂のお湯でビショビショ。とっても、気持悪い。
「ここはどこ!?私は誰!?!いや。違う違う……。落ち着いて。
私は茜……蒼っていう弟のようなのがいて……。
よし。覚えてる。よかったぁ〜。……じゃなくて、ここどこ?アルプス!?」
起き上がるやいなや、茜は回りを見渡しながら言った。
「家のお風呂場からこんなところに繋がってたなんて、知らなかったなぁ〜……ってそんな訳ないだろっ」
自分自身にノリ突っ込みを入れながら、もう一度回りを見渡すと、ある一点に目がいった。
どこかで見たことがある。
思い出そうと、う〜んと唸りながらその一点を見つめながら記憶を探る。
「……あっ!思い出した!今朝見た夢の場所だ!ってことは、まだ夢を見てるんだ〜!よかった!」
(そうだよね。流されてこんなところに来るなんて夢じゃない限りないよね!)
そう思いながら、夢の場所へと向かう。
その場所は、大きな木が生えていて、地面には雑草や花が咲いている綺麗な所。
その近くに村もあるようだ。
小さい家が所々見える。大きい町というわけではなさそうだ。
大きな木のあるところは、丘のようになっていたので、回りを見渡しやすい。
(もしかしたら、あのオレンジの髪の人に会えるかなぁ〜?)
キョロキョロと探していたら、本当にいた。
確かに会えたらいいなぁ〜と思ったが、本当にいるとは思わなかった。
びっくりして、立ち尽くしてしまう。
だが、よく考えるとこれは夢なのだ。
オレンジ髪の人は、馬に乗っていて、こちらの方に近付いてくる。
(白馬に乗った王子様みたい……)
茜は思った。だが、残念ながら馬は白馬ではなく茶色い馬だ。
向こうもこっちに気付いたみたいで五メートル先ぐらいで止まって目を見開いている。
なにをそんなに驚いているのだろうか?
もしかして、向こうも私のことを知っているのだろうか?
そんなことを思っている間に、オレンジ髪の人が目の前に移動していた。
「――――?」
なにか聞いているみたいだが、言葉がわからない。
それは、いつもの夢と同じだ。だか違うのもある。
顔が見えるのだ。いつもだったら、顔は逆光で見えなかったのだが……。
そう思いながら、まじまじと見つめてしまう。
オレンジの髪、青い瞳そして鍛えられた上腕二頭筋。
「――――?――。」
また、問いかけてきたみたいだ。今度はゆっくり言っている。
多分同じ質問を繰り返したのだろう。聞き取ろうとするが、英語でもないらしく、わからない。
英語だったら聞き取れる単語があってもいいはずだ。
「ごめんなさい。言葉がわかないの……」
首をふりながら茜はそう答えてから今朝の夢のことを思い出した。
この後、たしかもう一人あらわれるはずだ。ダークブラウンの髪の……。
その考えを妨げるように、大きな声が聞こえた。
「――?――――?」
その声は、オレンジ髪の人後ろからだ。
オレンジ髪の人は振り返り、安心したように、なにかを呟いた。
その声の主は、私を見るなり驚いた顔をして、オレンジ髪の人に話しかけている。
あの人だ。ダークブラウン髪の人、なんというか、さわやか系って感じの人で、どこかの韓流スターよりかっこいい。絶対に。
困惑した顔も様になっていて素敵だ。
こんなに、かっこいい人を見慣れていない私は、二人の顔に見とれてしまっていた。
そう、いつもならこの辺で目がさめるのだがそんな気配がない。
よくよく考えてみれば、同じ夢を繰り返し見ることってあるのだろうか?
しかも、一回夢から覚めた夢も見ていることになる。
そんな夢は一度も見たことがない。
(……もしかして、これは夢じゃない!?そんなバカな!!?
これが夢じゃないなんてありえないよ!絶対夢だ!!なにがなんでも夢!
これは夢なのだ!夢なんて矛盾してるもんさ!うん。
てか、夢なら言葉わかるようになってよ〜!
言葉がわからないの、こんなに不便なんて!!!)
自分の中でパニックをおこし、無理矢理納得し、怒る茜であった。
ふと見ると、二人はまだ困惑顔で考え事をしているようであった。
意を決したように、ダークブラウン髪の人が話しかけてきた。
「Can you speak English?
Do you understand?
(あなたは英語を話せますか?わかりますか?)」
(……はい?今聞き取れた単語があったような……?)
「すぴーく、いんぐりっしゅ?」
つたない発音で繰り返す茜。
そうだというように、うなずくダークブラウン髪の人。
(なぜ、いきなり英語?わけわかんないですよ奥さん!
もしかして、夢だからか?言葉分かれって思ったから……?。
それでも英語って……。なんでですか!?)
わかる単語で返さないとと思うのだが、通知表の英語はいつもあひるが泳いでいる。
真面目に勉強しておけば、それなりには意思の疎通ができただろうに。
そう思わずにはいられない。
(はぁ〜……。そうだ!一つだけ覚えていることがあるよ!)
「あい どんと すぴーく いんぐりっしゅ!(私は英語がしゃべれません)」
発音はどうだかわからないが、キッパリとそう言ったら、また困った顔をさせてしまった。
ちゃんと伝わったらしい。
「あっ。でも、少しならわかりますよ?」
慌てて日本語で付け加え、手振り身振り、少しならと伝えようとする。
それがわかったんだか、どうだか知らないが、ダークブラウン髪の人は自分を指して、コンラートと繰り返した。
「コンラ……ッド?いや、コンラート?」
名前なのだろう。茜がそう繰り返したら、「コンラッドOK」と茜にも分かるように言う。
コンラッドの方が言いやすいなら、それでいいと言うことだろう。
そして、オレンジ髪の人を指してヨザックと言った。
「ヨザック……」
ふむふむと茜はうなずきながら、自分を指さした。
「私は、茜だよ。アカネ。」
「アカネ?」
「うん!茜。えへへ〜♪」
コンラッドさんに名前を呼ばれつい嬉しくなりにこにこしてしまう。
そのコンラッドさんが、何かに気付いたように、カーキ色の上着を脱ぎ私に羽織らせた。
その行動にびっくりして、コンラッドさんを見ると、にっこりと微笑みかけられた。
(……あ、そっか。私、濡れてたんだっけ……)
茜は自分の状態を思いだして納得した。
優しい人だなと思いながら、ありがとうと言った。
言葉は伝わらなくても、きっと気持は伝わっただろう。
コンラッドさんは優しく微笑んでくれたから。
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