若者のすべて(2/3)



小さく流れるテレビの音以外に音は何もない。
音楽を聴く気にもなれずに、再びソファに身体を預ける。

感傷からくる倦怠感に前身を支配されて、ダラリと腕を落とした。
何度繰り返しても、思い出す。
決して薄れることはない記憶。

運命だった。

そう思うことにしている。
そうなる運命だったと。
これでよかったのだと。


隊長、隊長!

おい、あんまはしゃぎなや。コケんで。

りんご飴!食べましょう!

食うたらええやん、俺はええわ。

あ、


思わず2人見上げた空には、大輪の花。

綺麗…。

そう言って、見上げた彼女の顔をそっと眺めた。
色鮮やかな光が、彼女の瞳に映し出される。


死神になった最初から、いつどうなるかわからないと思っていた。
正直、いつまでも側で守っていけるかどうかも怪しいと。
儚く散っていく花火は、まるで自分と彼女の行先を暗示しているかのようで苦しかった。
でも、だからこそ、この瞬間を愛おしく想った。
大切にしたいと、心から願った。
そう願うから、一度も言葉にしなかったのだ。
自分の気持ちの中だけでの誓いでいいと思っていた。
もし彼女が別の誰かのものになったとしても。


結果的に、間抜けにも今こうして現世にいる。
彼女がその後どうなったのかは、知らない。
知る必要もないと思っている。

沢山の死神が死んだ。

もし−…。

その先を考えようとすると、たまらなく恐い。
とうの昔に過去は捨てた。
尸魂界に帰ったとしても、取り戻すことはできない。


〜♪

「…なんやねん」

振動する携帯を取り出して、液晶を確認すると“浦原喜助”の文字。

「なんや」
「どうもぉ」

携帯の向こうから、間延びした声が聞こえてきた。

「あれ?今日は皆さんで祭りにお出かけでは?」
こちら側の静寂を察して、喜助が疑問を口にする。

「別に。気分やなかっただけや」
「ふぅん。なるほど」

まぁ、いいんスけど。

喜助のどうでも良さげな声に、ため息を吐く。

「で、要件はなんやねん、要件は」
「あ、そうそう。平子さんに折り入って頼みがあるんスけど…」

なんや、珍しいな。

一体何なのかと胸中で呟く。
喜助に頼み事をすることはあっても、喜助から頼み事をされるというのはあまりないことだ。

「いえね、尸魂界から訪ねて来る人がいるんスけど、その人を迎えに行ってほしくて」
「は?」
「アタシも手が塞がってて、ちょっと店から動けないんスよ」
「なんで俺が行かなあかんねん。ガキどもがおるやろ」
「雨もジン太もテッサイさんとお祭りに行ったんスよ」

ったく…。どいつもこいつも。
わざと舌打ちすると、「まぁまぁ」と喜助が苦笑いするのが分かる。


穿界門が今日の午後8時前後に開く予定なんで、お願いしますね。

喜助が言った言葉を思い出しながら、屋根の上をのんびりと歩く。
携帯の液晶で時間を確認すると7時30分過ぎ。
教えられた神社まではそう遠くない。
歩いても十分間に合うだろう。

かえってよかったのかもしれん。

動いているほうが気が紛れる。
随分と涼しくなった夜風を、すぅっと吸い込むと、夏の終わり独特の匂いが鼻を抜けていった。






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