あの娘に会いに(2/3)



『正月どっか帰ったりする?』

突然鳴った着信に出ると鳴子からで、唐突に今こんなことを言われている。

「いや、別に予定はないけど…」
『それやったら、大阪遊びに来ぉへん?』

4日あたりとかどう?と、明るい声が耳元で響いた。

「え、なに、急に」
『ええやん、別に』

暇やし誰かと遊びたいなて思ただけや、と鳴子は言う。
女の子と2人で遊ぶということがなかったから、かなり緊張する。
どうしようかな、と逡巡するがまぁ1日くらいならいいかと鳴子の誘いを承諾した。

『やったぁ。色々大阪案内したるわ!』

楽しみにしといて、と上機嫌で言うと、ほなねと言って電話は切れてしまった。
相変わらず唐突な子だな、とため息をついて携帯を鞄にしまう。
運転しているお父さんが横から、友達か?と少し嬉しそうに聞いてくるので、うん、まぁ、と少し恥ずかしくなって素っ気ない返事をしてしまった。
それでもお父さんはどこか嬉しそうなまま、友達かぁ、と呟いた。


終業式も終わりいよいよ年末である。
お父さんの仕事が忙しいので帰省はしない予定だ。
私としても帰省すると、おじいちゃんやおばあちゃんに色々心配されたり、明らかに不憫に思われてる感が伝わってくるのがちょっと苦しかったりするので、よかったかなと思っている。

今日は年に数回のお母さんの墓参りの日で、早朝に出かけて墓の掃除やお花の取替えやら色々してきた。
命日の近くでお父さんが休みがとれる日と年末は毎年2人で墓に行く。
お母さんの実家が関西の田舎だから、京都からは車でいける距離に墓がある。
京都に行くとお父さんが言い出したのも、墓が近くなるというのもあったのかなと今になってふと思う。
逃げ出したいのだとばかり思っていた。
お父さんはお父さんで、一生懸命いろんなことに向き合おうとしているのかもしれない。

「ん、友達って女の子だよな?」
「え、うん、そうだけど」

つらつらと考えていると思い出したかのように、お父さんが聞いてきた。
変なこと聞くなと思いながら、お父さんを見ると満足そうな顔をしている。

「遊びに行くのか」
「うん、4日に大阪行ってくる」
「泊まってきてもいいんだぞ」
「いや、それはいいかな…家で寝たいし」

そういうもんか、と言うお父さんに対して、うん、そんなもんだよ、と返すといつもの沈黙が戻ってきた。
友達というものに対して少し淡白な私に対して、お父さんのほうがヤキモキしているのは目に見えて分かる。
人付き合いがそんなに上手じゃないのはお父さんも同じで、だからこそ娘の友達関係をどう心配したらいいのか分からないのだろう。

1人苦笑して流れていく景色を目で追うと、見慣れた道が見えてきて、家が近づいていることが分かる。

あ、。

グレーの自転車に細くてしなやかな身体と、口元をレッグウォーマーで覆って真っ直ぐ前を見据えながらペダルを漕ぐ姿を追い越した。
思わず窓ガラスに顔をくっつけて、その姿を急いで確認する。
やっぱり、そう思って座席に座り直した。
自主練だろうか。
久しぶりに御堂筋くんを見た気がする。
車のバックミラーをチラッと見て遠ざかっていく彼を見送った。

冬休みに入ってしまえば、学校以外の接点がない私と御堂筋くんが繋がることはない。
連絡先を聞くのもなんだか気が引けるし、と思っていたら結局休みに入ってしまった。
なんというか、聞く口実がないし、聞いたところでどうするのかもよく分からない。

連絡先教えてくれへん?

そう言ってスマホを振って見せた光太郎先輩の爽やかな笑顔が思い出される。
あんなふうにサラリとそういうこと言えるって、本当にすごいなと思う。
そんな光太郎先輩とはメッセージのやりとりを途切れずに続けている。
携帯を取り出して最後の先輩とのメッセージのやりとりを表示した。


『石垣光太郎:今年もあと少しやなぁ』
『なんかあっという間でした。そういえばセンターまであと少しなんじゃないですか』
『石垣光太郎:思い出させんといて…』
『ごめんなさいm(_ _)m』
『石垣光太郎:うそうそ笑 忘れたくても忘れられへん』
『そうですよね』
『石垣光太郎:今年はちゃんと初詣行って願掛けせんとあかんなぁ』
『合格祈願ですか?』
『石垣光太郎:うん。名前は初詣行くんか?』
『特に予定はしてなかったけど…折角京都にいるんだし、行ってみようかな』
『石垣光太郎:有名どこは三が日はやめといたほうがええよ。人半端ないから』
『わ、それは嫌だな』
『石垣光太郎:地元の神社で気持ちのええとこあるから、一緒に行くか?』
『いいんですか?』
『石垣光太郎:ええよ。息抜きも必要やし、名前と初詣行けるん嬉しいわ』
『ありがとうございます』
『石垣光太郎:ほんなら、2日の午前中はどうや?』
『大丈夫です』
『石垣光太郎:よっしゃ。前日にまた連絡するわ。またな』
『はい!』