夢想の糸を売る

玄関 案内 本棚 拍手 連絡



butterfly



050



 あれ?と疑問に思っていたことが、一気に解決した。安室さんって、公安の若手エリートだよね?間違いなく同期のトップを走っているはずだよね?それなのに…


  1. 「安室さんは、その真奈さんのことが気になっているのですね。」
  2. 「ええ。でもそれ以上に加奈さんを気にしています。」
  3. 「…そう言うの、今はいいですから。」
  4. 「ホォー、照れてくれましたか。これだけ近いと流石に男として見てくれるんですね。」

 下から見上げてくる瞳が灰がかった蒼で、深く吸い込まれそうな感覚に陥る。…上目遣いって女の武器じゃなかったっけ?確実に熱を持っている頬を両手で隠し、視線を逸らす。カウンターに置いてあるドリンクで一呼吸おいて、小さく息をはいた。


  1. 「…前にも言ったと思いますが。安室さん、イケメンって自覚あります?」
  2. 「僕も答えた覚えありますけど、加奈さんには勘違いしてほしいです。」
  3. 「他の女の子を気にしている方が何を仰っているんだか。」
  4. 「そうやってあなたの気を引こうという魂胆かもしれませんよ?」

 にっこりと笑って、じっと見つめられて。この人、ヤダ!自分がイケメンだって分かってるでしょ!?


  1. 「…こんな近くで見つめられるなんて思っていませんでしたから…メイク、直してきます。」

 安室さんのキザっぷりにやられてパウダールームに逃げ込む。鏡に映ったのは『加奈』。オネエサンに作られた夜の女。


  1. 「…安室さん、気がついてない…」

 『右治真奈』と『加奈』が同一人物だって。


  1. 「うわっ…公安を騙せちゃってるよ。」

 ペタリと頬に手を当てる。それからむにっと引っ張ってみる。


  1. 「え…安室さんって、バーボンだよね?ベルモットの変装とかよく見てるんだよね?こんな変装にもならない初歩に引っかかるなんて…大丈夫なの?」

 でもこのままバレずにいけば、もしかしたら適正な距離を保てるかもしれない。彼が私に持っている考えを聞くことができるかもしれない。それはそれで…


  1. 「あり、だよね。」

 鏡の私に向かって小さく問えば、頷き返されたような気がした。



2018/01/07 掲載
2023/03/15 再掲