09:答えを急かした

2021/02/22

#2

「答えは……ざんねーん! Hの、本当は世界的に有名な楽器職人なのに、それを忘れている。は不正解でした〜!」

また2時間後にクイズは行われ、その答えは不正解だった。またしても、外の世界の彼らには簡単に真偽が分かる選択肢だ。
さらに2時間の軟禁が決定したところで、私は三角座りのまま、頭痛のしてきた頭をゆっくり持ち上げる。
……そうか、視聴者たちには、正解する気など無いのだ。
12回全部を外したとしても、最後に残った選択肢が正解だったのだと分かるのだから。

正解しないと真実が得られないなんて嘘。クイズなんて形式も嘘だ。
全ては、私たちを閉じ込めて、不安を煽って楽しむだけの余興。
メインイベントである、コロシアイゲームのおまけ、とはそういう事なのだ。

モノクマがまた2時間後、と締めくくってどこへやら去っていく。
また4人きりの静寂に戻ると、私は耐えきれずに独り言をこぼした。

「お腹すいたな……」

すると、合歓が返事をする。

「このまま正解するまで、メシも食わせねーつもりかよ。餓死させようってのか」

「んうう……でも、全部不正解でも24時間だからね……。1日じゃ餓死はしないよ……はぁ……」

いっそ死ねたら、と言いかけてやめる。また、自己陶酔の破滅願望だと、頭の中で声がしたから。

ルトラは1回目の回答が終わった時から、ピアノ修理に戻っている。何も無かったかのように黙々と。
薬の正体に気付いた時はあんなに深刻そうな顔をしていたのに、今はもう、慌てても仕方がないと言うように落ち着き払っている。

そして、その向かいには琴都が、余った端材で適当な小物を作って遊んでいる。
彼女もまた、どうにも出来ない状況なら好きに過ごす、というスタンスで居るらしい。

……2人みたいにはなれそうもない。
タブレットが取り上げられたと言っても、私たちの姿が今もネット上に晒されている事に変わりはないのだ。
どんな酷いコメントを書かれているだろう、と想像すると気が滅入る。

「ああ……クイズとかうぜー」

合歓は、私とは少し違う意味で落ち込んでいる。
彼女はとにかく、自分が面白がられている事に腹を立てているようだ。
クイズの答えについて、どう考えているのかは分からない。
時々考え込むように頬杖をつくけれど、その考えを口にする事は無かった。

――そしてまた、2時間が経つ。

「あららー、またしても残念! Fの、そもそも楽器なんて物無い。は不正解です! いや〜、まさか楽器が存在するなんて、予想できませんでしたよね〜? 難しいクイズですね〜?」

そう、私たちを振り返りながら、モノクマは言う。
お昼時だけれど、もちろん昼食にありつく事は出来なかった。




*



……ああ、また、2時間が経った。

「はい、またしても残念! C指名手配されたから。は不正解でした〜! ボクも調べてみたけど、彼女たちは指名手配されていませんでしたね〜。うぷぷ」

また、2時間後。

「ああ〜! 残念! I希望は前へ進むから。は不正解!」

また、2時間。

「J模擬刀の先制攻撃だから。は不正解です〜! ざんねーん!」

2時間。2時間。2時間。2時間。
何度も何度も不正解を聞くごとに、くだらない選択肢は消えていった。

そして、残った選択肢は5個。残り回答権は4回となったところで……。

「では、消灯時間となりますので、次回のおまけコーナーは明日の朝8時からとなります。うぷぷ、彼女たちの本当の役目とは!? そして次なるコロシアイはいつ行われるのか!? 明日もどうぞお楽しみに〜!」

私たちには目もくれずに、モノクマはまたこの部屋から去っていく。
このクイズが夜間には進まないと聞いて、合歓は壁を蹴飛ばしていた。

「私たちの反応を見せるため、かな」

「そうだろーぜ。ムカつくな」

つまりは、こんな状況でも夜は寝ろ、と、規則正しい生活を送れ、とモノクマは命じているのだ。
それが優しさだと思えるような能天気さは、もう残っていない。
目に見えないカメラに怯えて、私は寝袋を頭の上まで被った。

こんな物でカメラをかわせているのか分からないけれど、空腹で体力が落ちている為か、眠気は自然とやってきた。


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