鉛筆とあの子
[6/24]
*黒板に落書き
私達以外、放課後の教室は誰も居なくなってしまった。
何故なら今日はテストの日で午前中授業だから、大抵の人は午後からは友人と遊ぶのか早々と下校している。
初音とお弁当を食べた後、なんとなく二人で黒板に落書きをしている。
私は気に入ってる歌詞を羅列してみたり、その挿し絵的な人間を描いていた。
初音はというと、猫や犬や鳥の絵ばかり描いて遊んでいる。
「これ、うちが作ったお気に入りのキャラクターっ」
彼女は先程描いたばかりの、丸っこい気が抜けた表情をした鳥を指して自慢げに笑った。
「やから最近ノートの端によく描くんよ」
「へぇー、授業中やのに落書きばっかしてっ」
私はニヤニヤと指摘する。
「ちゃんとノートは取ってるから怒られたことないわ。広ちゃんは居眠りばっかしてるくせに」
先生も普段から真面目な生徒には寛容らしい。
「だって眠いんやもん、初音やってたまにするやん」
「まあね、でも広ちゃんは居眠りし過ぎてノート取れてないやん」
「う、すんません」
「しっかりしなよ!」
結局私はいつもと同様、初音に母親の様に叱られてしまった。頭を掻きながら頭を下げた。
「てかそれ何? 歌詞?」
ふいに落書きを見て初音が聞いた。
「うん、好きなんやぁ。コレ」
彼女が見たのは、『あなたに会いたくて 会いたくて』というお馴染みのフレーズだった。
「へぇー」
「MDしかないけど貸そうか? 聴いてみなよ」
お節介なことだが、この曲の良さを知って貰いたくて薦めてみる。
しかし、CDとテープしか聴けんから、と地味な理由で断られた。
「残念やなぁ」
初音は自分の描いた絵を消しながら、そやなぁと答えた。チョークの粉が舞う。私は無意味に顔の前で手を扇いだ。
「そういえばうちら、勉強もせんと遊んで」
ぼんやりと初音が話す。
「他の子らやって遊んでると思うで」
「まぁな…」
黒板消しを持つ手が止まった。
「いつ帰ろ」
私もぽつりと零した。
「今からデッサンしに行こうかなぁ」
その言葉を聞いて反射的に、じゃあついてくっと威勢よく答えていた。
初音はというと、まぁええけど。と少し呆れている。私は気にせず、もう一つあった黒板消しを掴んで落書きの上から斜めに走らせた。
初音も再び消し始める。
「私、隣でワークするわ」
「うん、それがええと思う」
一応は直ぐにきれいになった黒板を二人で眺めながら話す。
手に着いたチョークの粉をパンパンと払い、初音は側にあった鞄を片手に持った。慌ててこちらも鞄を席へ取りに行く。
私は少し待っていた彼女の後を追って小走りした。
栞を挟む
* 前へ | 次へ #
6/24ページ
LIST/MAIN/HOME