エッセイ *恋愛
鉛筆とあの子
[20/24]


*おやすみなさい


夜、3日振りに狭苦しい布団で大好きなアナタの隣で眠った。



左を向けばアナタの顔。洗い立ての髪が横に散らばる。でもあえて右向きか真上を向く私。

――なぜなら右手の薬指にはシルバーのペアリングがちらついてるから。気持ちが揺らがないように、いつでも彼氏のことを思い出せるように着けてみたが効果はあるみたいだ。



でも…最後の夜だから、自分のずるさと銀の指輪に目を瞑って単純に隣で居れる幸せを感じた。暖かくて、柔らかくて、可愛い初音と隣で温もりを共有してた。



部屋を真っ暗にして布団に入ると、向こうからはめったに話し掛けてこなくなる。



「初音、まだ起きてる?」

と今日もこちらが問いかける。すると間が開いた後、起きてるよ…とかすれた今にも寝そうな声が返ってくる。

何か今日眠れんわー、とこちらがこぼすと向こうも合わせて私も眠たくないなーと答えてくれる。

「初音って可愛いよな」

この台詞を言うとき、絶対ニヤけてしまう。

「可愛くないし」

でも向こうはそれを認める事はない。


「否、可愛いって。いっつも可愛いなって思うんやけど敢えて私言わんので」

「……」


目の前にはいつもの困った表情。きっとこんな風に言われるのは慣れてないんだろう。


あぁ、久しぶり。言いたくても、普通の友達を演じてく為にずっと我慢してたんだから。
初音に対して可愛い、と言ってるのは私にとっては愛しいとか好きって伝えてるのと殆ど変わらないから。


あぁ…可愛い、可愛い、初音可愛いよ。何でこんなにも愛しくて切なくなるんだろう。

好き、好き…だよ。貴方が一番好きだったのに。私とは恋人にはなれないと、抱き締めてくれたよね。

暫く黙ってたら左肩に初音がグリグリと顔を押し付けてうずくまってきた。温かくて、いい匂いがする。

眠いだけなのか、向こうも名残惜しくて寂しいのか。


そのまま今夜は離れず眠って。そう願う。
こんな風に未練がましく想っててごめん。今日で本当に終わりだから許してくれないかな。明日からは友達として気持ち切り替える、今は想うだけ想わせて。



キスがしたかった、ずっと側に居て欲しくて、手を握って欲しくて、これが恋なんだなって。
頑張って何度かデートに誘って、一人浮かれて楽しくて。一緒に海で砂山作って貝殻を拾い集めて時間潰して、夜告白したんだ。でも綺麗にふられて、でも好きだから告白して。

結局3回もふられたんだ(笑)



ありがとう、好きでした。

ありがとう、もう忘れるね。

否、隅っこではずっと覚えておくから。



ねぇ、おやすみなさい…こっそり言うけど、眠る前のキスがずっと憧れでしたかった。当然ながら出来なかったけど。


今日も我慢。寝顔見るだけでずっと我慢。

じゃあ、本当におやすみなさい。


今度一緒に眠るときは貴方を好きになった、雪の降る季節に。



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