エッセイ *恋愛
生殺しの体温
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*私の事も、あんな風に


貴女のコップが、私の上に被さっているだけで胸がきゅんとしたのです。

変ですかね、こんな些細なことが嬉しいなんて。


他の人だったら何とも思わないか、何でわざわざ私のコップの上から重ねるのとか、他置くところなかったのとか色々考えたりもするんですけど。

ただ、私はそれを見た時ちょっと胸の奥がざわつく恥ずかしさに襲われたのと同時に、何回でもそうして欲しいとも思ったわけです。





私の大きくはない底にいくほど少しだけ細くなる赤いチェックのマグカップに、新井さんのやや大きめの白いけどコーヒーで薄汚れたマグカップがすっぽりと重なっている。


貴女がいつも、唇を付けているそのカップの縁に私のカップが覆われてるだなんて。
このカップは、間接キッス状態だ。





私の事も新井さんで覆い尽くして欲しい。
身体中を新井さんの唇で覆われたい。

少し色の薄い、しっとりと濡れた新井さんの唇がもし私の肌に触れたら……とリアルに考えを巡らせると頭の中が更に熱くなってくる。







そんなどうだっていい妄想をしていたら、休憩時間は過ぎていった。
また新井さんとは、今日もすぐ顔を合わすのだろうけど少し恥ずかしいなと思った。


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