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魔法学園:ホワイトデー
2021/03/14(Sun) 創作小説:現代アクション
 今日はホワイトデー。友達から家族、そして恋人までチョコを配ったからか、お返しがたくさん来た。
 恭佳からは、お手製のガトーショコラと、お揃いのキーホルダー。
 中等部の幼馴染、深月と深幸からは、期間限定のマシュマロ入りチョコレート。
 兄さん、健斗、杏奈姉さんからは、生徒会寮でチョコレートフォンデュを振る舞ってもらうことになった。

「うわぁ、すごーい!」
「これはすごいです……! 特にマシュマロ、蕩けますね」
「チョコバナナも絶品!」

 バレンタインチョコを忘れず配った私と凪は、小さな塔のような形で噴水のように循環するチョコレートフォンデュの機械で堪能していた。マシュマロやフルーツを刺したカトラリーまで用意されているなんて驚いた。

「杏奈姉さん達もそろそろ……」
「もーちょっと……! この瞬間を動画に……!」

 何故か撮影会みたいなことになっていた。
 動画?と首を傾げると、健斗が教えてくれた。

「兄さんには用意できていて、姉さんに用意できなかったのが悔しかったんだって」
「健斗、言わなくていいから!」

 顔を真っ赤にして焦る杏奈姉さん。図星の反応に苦笑してしまう。

「別にいいのに。兄さんとバレンタインデート、楽しめたんでしょう?」
「……うん」
「だったらいいよ。二人が仲いいの、すごく嬉しいんだから」
「……女神様っ!」
「いや、女神じゃないから」

 どっちかというと魔法馬鹿?
 なんて苦笑いを浮かべて否定するが、杏奈姉さんは拝むように私を見つめていた。

「有珠、今の発言は女神と言われても仕方ないぞ」
「兄さんまで……」

 兄さんにまで追撃されると言い返せない。

「有珠さん、もっと食べないと無くなりますよ」
「あ、うん」

 凪に促されて、今度は苺を選んだ。

「すごいな、チョコレートフォンデュか?」

 チョコレートを絡めた苺を口に入れたとき、生徒会寮のラウンジにジョットが登場した。
 口に手を当ててコクコクと頷けば、ジョットは小さく笑った。

「ジョットも食べる?」
「いいのか?」
「私はいいよ。凪も兄さん達もいいよね」
「もちろん! ただし、『あーん』は駄目だからね!」

 食べさせるときのアレを言った杏奈姉さん、可愛い。
 クスクスと笑ってしまう私とは反面、ジョットは少し残念そうだった。

「それより有珠。バレンタインチョコのお返しだが、いいか?」
「うん」

 カトラリーを置いて向き直ると、ジョットは小さな籠を差し出した。籠の中には、商店街で有名な店で売っている期間限定の桜グッズだった。桜の香水やアロマだけじゃなくて、ハンドクリームや石鹸の詰め合わせ……。

「すごーい! こんなに……いいの?」
「ああ。好みが分からないから詰め合わせセットにしてみた」
「全部好き! ありがとう!」

 受け取って笑顔でお礼を言えば、ジョットは照れくさそうに頬を指先で引っ掻いた。
 こんなに嬉しいホワイトデーは初めてで、私は大事に詰め合わせの籠を抱きしめた。


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