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Last cross:七夕
2021/07/07(Wed) 夢小説
 織姫と彦星が年に一度だけ会えるという日、七夕。
 昨日は生憎の雨だったけど、おかげで当日の夜は綺麗な天の川を一望できた。

「すげーっ」
「並盛川で見れるもんなんだなー」

 夜の河川敷で、綱吉と山本君が感嘆する。
 京子も三浦さんも「きれー」「素敵です!」と口々に言うけれど……。

「ねえ、どうして織姫と彦星が離れ離れになったか知ってる?」
「え?」
「天の羽衣を取ったからですか?」

 きょとんとした京子と答える三浦さん。

「二人とも、夫婦としてちゃんとしなかったからだよ。遊び惚けてお互いを蔑ろにしたから、織姫のお父さんが怒って引き離したんだって」
「えっ……!」
「はひー、ロマンチックじゃないですー」

 驚愕する京子。ショックを受ける三浦さん。
 年に一度の再会はロマンチックだけど、それをぶち壊してしまったかも……。

「でも、一種の戒めになるんじゃない?」
「いましめ……ですか?」

 不思議そうな顔をした三浦さんに、私は笑みを見せて、天の川を見上げる。

「一年に一度だけじゃなくて、毎日共に在れるようにお互いを大切にしようって思えるでしょう?」

 好きな人と離れ離れになる苦痛は誰にだってある。
 楽しい時も悲しい時も、感情を共有できる人がいてこそ安らぎを得るのだから。
 そんな私の思いに、小津君が笑った。

「天音って現実的だよなー」
「だって好きな人とずっといられる方が幸せだよ」

 好きな人と離れ離れになるなんて苦痛でしかない。
あの人≠ニずっと一緒にいたかった。でも、みんな≠フ未来を守りたくて……。

 ――あれ? あの人って……みんなって、誰?

「天音」

 いつの間にか隣にいた綱吉の声に驚く。
 顔を向ければ、綱吉は一本の手持ち花火を差し出した。

「獄寺君が用意したんだけど、一緒にやらない?」
「……うん」

 胸の奥に生じたモヤモヤが消える。
 笑顔で受け取って蝋燭で火をつけると、色とりどりの火花が散る。
 時間を置くごとに色が変わる火花にみんなもはしゃいでいる。
 こんな夏もいいなぁ、なんて思っていると、綱吉が私の手を握った。

「オレは天音から離れないよ」

 小さな声だった。けれど、耳に届いた囁きに驚いて綱吉を見れば、彼は笑っていた。
 どこか大人びているような、優しい眼差し。
 ドキリと心臓が跳ねて頬が熱くなった。それを隠すために、私もはにかんだ。

「私も」

 好きな人とずっと一緒にいるのは、簡単なようでいて難しい。
 でも、だからこそ大切にしようと思えるのだ。
 夜なのに少し熱い、それでいて優しい空間での思い出も。