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魔法学園:七夕
2021/07/07(Wed) 創作小説:現代アクション
今日は七夕。
近年稀に見る大量の雨で不安だったが、奇跡的に昼間に雨が上がって青空に変わった。
それは夜まで続いて、綺麗な天の川が広がっていた。
聖來魔法学園は山奥にある学園都市だから、都会より美しい夜空が見られる。今夜は天の川があるから、特に綺麗だ。
「消灯時間は過ぎているぞ」
「ひえっ!?」
都市内にいくつかある展望台で天の川を眺めていると、背後から声が聞こえた。
びっくりして変な声が出てしまったが、振り向くとジョットがいた。
「じょ、ジョット!? 何でここに……!」
「生徒会寮には空中庭園があるからな。毎年そこで天の川を見ていたんだが……」
あ、そこで見かけたんだ。ちょっと申し訳ないかも。
謝ろうと口を開くが、その前にジョットが私の隣に座った。
見た目は線が細くても、少年と青年を行き来する男らしい体格だから、少し狭く感じる。
それに、座っていても目線の差があって、こういうところも男なのだと実感する。
「ここから見る夜空も綺麗だな」
澄んだテノールの声に、心臓が跳ねる。
「……うん。お気に入りなの」
頬に熱が宿った気がして、誤魔化すために天の川を見上げる。
美しい天の川を眺めていると心が癒されて、自然と笑みが溢れた。
「……だな」
「え?」
何かを呟いたジョットに顔を向けると、彼はハッと我に返って口に手を当てる。
視線をさ迷わせる様子に首を傾げると、ジョットは手を伸ばして私の髪に触れる。
「有珠も綺麗だ。まるで月星を包み込む夜空のようで」
……これは、口説かれているのかな? いや、そんなはずはないか。
「だったら、ジョットは青空だね。雲一つない澄んだ青空みたい」
例えるなら夏に見られる紺碧の空だ。
穏やかな笑顔で褒め返せば、ジョットは顔に手を当てて深く息を吐き出した。
「どうしたの?」
「……有珠が学園最強の魔法使いだなんて、未だに信じられないんだ」
「あー」
「S級の魔物を一撃で倒せるし……少し自信を無くすよ」
もしかしてコンプレックスになってしまったのかな?
居た堪れなくなるけれど、私は勇気を出して私に触れるジョットの手を握る。
「ジョットも強い。魔法だけじゃなくて、心が」
私を抜けば、学園で最強なのはジョットだ。それでも胡坐をかかずに鍛錬を重ねている。
それに、私は――
「ジョットがいたから、私の今があるの」
ずっと偽ってばかりだった私の本当≠曝け出すきっかけを作ってくれた。
ジョットがいなければ、私はずっと身内の命令に囚われていただろうから。
「ありがとう。ジョットがいてくれてよかった」
笑顔で感謝の気持ちを伝える。
すると、ジョットは悩ましげに眉を寄せて、私を抱きしめてきた。
「んっ。ジョット?」
「……すまない。少し、このままでいさせてくれ」
熱を孕んだ声に心臓が跳ねる。
気恥ずかしさが込み上げて来たけれど、抑え込んでジョットに寄り添う。
二人きりの空間は心地良く感じるのは何故だろう。
不思議な感覚に疑問を抱きながら、ジョットの気が済むまで傍にいた。
こんな七夕もありかな、なんて……心の片隅で思いながら。
近年稀に見る大量の雨で不安だったが、奇跡的に昼間に雨が上がって青空に変わった。
それは夜まで続いて、綺麗な天の川が広がっていた。
聖來魔法学園は山奥にある学園都市だから、都会より美しい夜空が見られる。今夜は天の川があるから、特に綺麗だ。
「消灯時間は過ぎているぞ」
「ひえっ!?」
都市内にいくつかある展望台で天の川を眺めていると、背後から声が聞こえた。
びっくりして変な声が出てしまったが、振り向くとジョットがいた。
「じょ、ジョット!? 何でここに……!」
「生徒会寮には空中庭園があるからな。毎年そこで天の川を見ていたんだが……」
あ、そこで見かけたんだ。ちょっと申し訳ないかも。
謝ろうと口を開くが、その前にジョットが私の隣に座った。
見た目は線が細くても、少年と青年を行き来する男らしい体格だから、少し狭く感じる。
それに、座っていても目線の差があって、こういうところも男なのだと実感する。
「ここから見る夜空も綺麗だな」
澄んだテノールの声に、心臓が跳ねる。
「……うん。お気に入りなの」
頬に熱が宿った気がして、誤魔化すために天の川を見上げる。
美しい天の川を眺めていると心が癒されて、自然と笑みが溢れた。
「……だな」
「え?」
何かを呟いたジョットに顔を向けると、彼はハッと我に返って口に手を当てる。
視線をさ迷わせる様子に首を傾げると、ジョットは手を伸ばして私の髪に触れる。
「有珠も綺麗だ。まるで月星を包み込む夜空のようで」
……これは、口説かれているのかな? いや、そんなはずはないか。
「だったら、ジョットは青空だね。雲一つない澄んだ青空みたい」
例えるなら夏に見られる紺碧の空だ。
穏やかな笑顔で褒め返せば、ジョットは顔に手を当てて深く息を吐き出した。
「どうしたの?」
「……有珠が学園最強の魔法使いだなんて、未だに信じられないんだ」
「あー」
「S級の魔物を一撃で倒せるし……少し自信を無くすよ」
もしかしてコンプレックスになってしまったのかな?
居た堪れなくなるけれど、私は勇気を出して私に触れるジョットの手を握る。
「ジョットも強い。魔法だけじゃなくて、心が」
私を抜けば、学園で最強なのはジョットだ。それでも胡坐をかかずに鍛錬を重ねている。
それに、私は――
「ジョットがいたから、私の今があるの」
ずっと偽ってばかりだった私の本当≠曝け出すきっかけを作ってくれた。
ジョットがいなければ、私はずっと身内の命令に囚われていただろうから。
「ありがとう。ジョットがいてくれてよかった」
笑顔で感謝の気持ちを伝える。
すると、ジョットは悩ましげに眉を寄せて、私を抱きしめてきた。
「んっ。ジョット?」
「……すまない。少し、このままでいさせてくれ」
熱を孕んだ声に心臓が跳ねる。
気恥ずかしさが込み上げて来たけれど、抑え込んでジョットに寄り添う。
二人きりの空間は心地良く感じるのは何故だろう。
不思議な感覚に疑問を抱きながら、ジョットの気が済むまで傍にいた。
こんな七夕もありかな、なんて……心の片隅で思いながら。