05-09
宝具である純白のローブを脱いで消して、水の浄化魔術で全身を洗う。
この世界では毎日お風呂に入る習慣がない。
この共同住宅にはお風呂がある。それを考えれば、ここは平民からすれば
でも、毎日使うわけにはいかない。だから水の浄化魔術で、服ごと体を洗わなければいけない。湯船に浸かれないのは痛手だが、この魔術は洗うと言っても水浸しになるわけじゃないから我慢できる。ただ汗と
無詠唱で発動してさっぱりしてから歯磨きした後、ベッドに腰かけてぼーっとする。
肉体的にも精神的にも疲労が
『――シーナか?』
数秒もしない内に繋がった声に、ほっと肩の力が抜けた。
「うん。今、オリヒオに着いて、共同住宅の一室を借りたところ」
『……思っていたより早かったな』
「マッハで飛んだからね」
自慢するように笑みを浮かべて言えば、「無茶をするな」と
『冒険者ギルドには?』
「先に行ってきた。オリヒオの道中で遭遇した冒険者経由でギルドマスターに会ってね。一気にCランクになったよ」
『何がどうしたらそうなるんだ』
普通では考えられないスピード出世に早くもツッコミを入れるフィー姉さん。
さて、どう説明しよう……。
「あー……。Gランクは街の中の仕事ばかりだから、早くFランクに上がるために試験を受けようとしたの。そうしたら遭遇した内の一人のBランク冒険者に模擬戦を頼まれて、それを兼ねてやったら勝っちゃって」
説明したら、「流石と言うか何と言うか……」と驚きと呆れを含んだ声が返ってきた。
何故、呆れ?
「それをギルドマスターが見てて、私の正体と実力を考慮してCランクになったの。できることならDランク辺りが良かったけど……」
『大差ないだろう。だが……まあ、上手くやっていけそうで良かった』
「まだ初日だから何とも言えないけどね」
しばらく近状報告のための連絡が続き、おやすみなさい、と終わって通信を切る。
携帯通信魔道具のイヤーカフと錬金王の耳飾りという魔道具の一種のイヤーカフを外し、ハーフアップの髪型に固定していた髪留めも外して《宝物庫》に入れる。
さて、寝よう。
――コンコン
ベッドに横になろうとしたその時、扉の方からノックが聞こえて寝転びかけている姿勢のまま停止する。
「マドラかな?」
パッと頭に浮かんだのは、女将マドラ。
初対面だけど女性同士だし、女性の部屋に訪れる抵抗感はない。
もしかして伝え忘れた話があるのかもしれない思って、ベッドから離れて扉を開ける。
だが、そこにいたのはマドラではなく……。
「……エドモン?」
何故かエドモンがいた。風呂上りなのか髪が濡れており、肩にタオルをかけている。白いシャツと黒いズボンというラフな格好だけど、どことなく色香が
……【悠久の衣】、出しておくべきだった。
「何か用?」
「部屋に入っていいか。長話になるんだが……」
男を女性の部屋に入れるなんて、フィー姉さんが知ったら怒るだろうなぁ。
私も初対面の男を部屋に入れるのは遠慮したいけど……。
「……まぁ、いっか。大体予想つくし」
少し悩んで言えば、エドモンの眉がピクリと動いた。
僅かな変化を気にしないで部屋に入れ、ベッドに腰かける。エドモンは机に備え付けられている椅子に座った。
「……お前は、古代族なのか?」
「そうだよ」
神界で誕生したという、普通の古代族とは違う特殊な出自を持つけどけどね。
そんな経歴は話せないし、話しても信じないだろう。
「貴方はエリーゼ様の髪の色だから、すぐに判ったよ」
「お前は創造神と女神、二つの色を持っているようだが」
エドモンの口振りに、少し驚く。
女神エリーゼ様と同じ髪の色だから、エリーゼ様のみ夢に現れるはずだ。つまり、私の左眼で判断したのだと思っていた。
しかし驚くことに、彼は私の右眼にも反応していたらしい。
それって、もしかして……。
「身内にディオン様の色を持つ人がいたの?」
「…………ああ」
かなり間が開いた。
あまり触れられて欲しくなさそうなので、「ふぅん」と呟いた。
「確かに二つの因子を持ってるけど……」
「普通の古代族は一人につき一柱の神の因子しか持たない」
ここでエドモンの言いたいことが解った。
彼の言う通り、古代族は一人につき一柱の神の因子しか持たない。――否、一つしか持てないのだ。一つ以上は因子に含まれた
「十四年間の旅の途中で出会った古代族は、一柱以上の神の因子を持っていなかった」
十四年間って……一体何歳だろう? 魔力の高い人族や私達古代族は実年齢を
というか、身内以外からもディオン様の情報を得ていたのか。私の予想は当たらずとも遠からずだったようだ。
いや、それは今どうでもよくて……。
「何故お前は破綻しないでいられるんだ」
「……何でもかんでも他人に話すほど馬鹿じゃない。そもそも私、貴方のこと良く知らないし」
「それは今と関係――」
「親しくもないのに。貴方自身のことも知らないのに、私のことを話すなんてフェアじゃない」
相手からすれば
僅かな敵意を宿した静かな眼差しで見据える。
視線が
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