06-05


 世界最大と謳われるアマデウス大陸には、現在は五つの国と三つの小国がある。

 大陸の西側にある世界最高峰の大国、バシレイアー帝国。他種族国家で、同盟国と外交で商品を輸出入している。安定した気候であるため、様々な農産物に恵まれている。

 大陸の東側に位置する、ヒエロファニー王国。創造神、女神、竜神、精霊を正しく崇めている大国。独特な武器、民族的な織物や衣服が多いことで有名。ヒエロファニー王国特有の「巫女」という職種は「僧侶そうりょ」ではなく、神聖なものを守護する特殊な戦闘職である。

 大陸の北側に位置する国、パラミシア国。妖精族が多く住まい、自然や四季折々の精霊は妖精族と共存している。とはいえ妖精族は、自然界の均衡きんこうを調律する存在である精霊を崇めているため、ある程度の線引きをしている。

 大陸の南側に位置する国、エルドラド国。国民も多く、パラミシア国の次に長く続いている国。様々な種族の獣人や亜人が住み、多種多様な生活様式がある。南国なので年中が温かな気候で、温泉の源泉が各地にある温泉郷おんせんきょうとしても有名。

 この四カ国を四大同盟国と言い、互いに均衡を取り合って平和を築いている。


 大陸の中央に位置する、プルーシオス帝国。ヒエロファニー王国の次に大きな国だが、海を狙って四大同盟国に戦争を仕掛けている。それぞれの派閥があり、内部争いが絶えない。元々は小国だったが、九代目の皇帝が過去に数多くあった小国を滅ぼして領地を広げた。

 プルーシオス帝国は四大同盟国の頭痛の種であり、アマデウス大陸の最大の汚点。
 この帝国は、残りの三つの小国も取り込む気で戦争を仕掛けているため、四大同盟国は残りの小国を擁護ようごしている。

 ディアノイア小国は、魔術以外で考古学的な学問を取り入れていることで有名。

 カルポス小国は、のどかな田舎と表現できる国だが田畑が多くて、様々な作物を栽培している。
 スタウロス小国は、宗教的な信仰が厚い国として有名で、ヒエロファニー王国と親密な関係にある。ただしヒエロファニー王国と違い、神が創り出した存在ではない亜人を差別する節がある。

 アマデウス大陸の西側にあるオプディムス大陸には、軍事国家で有名なケントゥリア帝国があり、アマデウス大陸とオプディムス大陸の間には海上都市フルクトゥアトがある。
 この海上都市フルクトゥアトは水の都とも呼ばれ、海底には人魚の国があるとされている。



 ――ネディとジュリアにお礼を渡した後、『白兎の庭亭』に戻って購入した世界史の本を読む。
 現在、在国しているバシレイアー帝国の歴史や他国のこと、種族のことが一冊に全て記載されている便利な本だ。
 フィー姉さんから常識として習ったけれど、知らないところもあった。

「人魚かぁ……。見てみたいなー」

 前の世界での人魚は空想の産物だった。しかも一部では歌声で魅了させ、人肉を狙うセイレーンと同等の存在として描かれているパターンもあった。
 この世界での人魚はどんなのか、凄く興味がある。今の生活が落ち着いたら、行ってみるのもありかな。

「……っと、それより種族は……」

 この世界にいる種族は五つ。フィー姉さんから教えられた種族の中で知らなかったのは、妖精族の詳細と、各種族の平均から最長の寿命だった。



 人族。繁殖力は程々に優れ、数多のことを凡庸にこなす力を持つ種族。魔力を持つ者は五分の一ほどで、魔力量はそれぞれによって差がある。平均寿命は五〇〜八〇歳。ただし魔力量によって寿命は何倍にも跳ね上がる。魔女という存在も、人族の女性のみに現れる。

 獣人族。体の一部に獣の姿を持つ種族。武力にひいで、飛び抜けて繁殖力に優れているが、魔術の系統は向いていない。短命で、六〇代までが寿命。

 妖精族。エルフ、ドワーフ、ホビットといった精霊に馴染み深い特殊な種族。どの妖精族も精霊を信仰し、力を貸し合い、共存している。人族や獣人族と交わった妖精族の子供は亜族となり、平均寿命が極端に下がる。火、水、風、地といった属性を満遍まんべんなく使いこなせるが、複合属性は使えない。そのため、混沌の精霊と契約できない。

 エルフ。顔立ちが整っている者が多く、耳は細長く先が尖っている。精霊魔術に長け、弓の取り扱いに優れているが、剣などの攻撃力や防御力が低い。ハーフエルフは亜人族に分類される。彼等は精霊魔術を使えない代わりに純粋なエルフより戦闘向きで、細身の剣や槍を得意とする。エルフの寿命は最長八〇〇代、ダークエルフは七〇〇代、ハーフエルフは一〇〇代。

 ドワーフ。背が低く、男は筋骨隆々きんこつりゅうりゅうひげが長く、女は恰幅かっぷくが良く、耳は細長く先端が丸い。頑丈であるため攻撃力と防御力が高く、属性の中では火と地属性の耐性が特に高い。鍛冶職人であり、精度に関しては人族や獣人族より遥かに勝る。寿命は二〇〇〜三〇〇代。

 ホビット。人族の十代前半の子供と同じか、それ以上に背が低い。酒と歌と踊りと自然を好み、集落で祝い事があると総出で宴会を開く。集落から出る機会は少なく、旅に出る者もほとんどいない。妖精族の中では最弱の部類だが、手先が器用で工芸的な高い技術力を有する。秘伝とされる酒類の製法や民族的な工芸品を独自で編み出すほど柔軟な頭脳を持つ。寿命は六〇〇〜九〇〇代。

 魔族。魔神が創り出した魔的能力が高い種族。穏やかな者から気性が荒い者まで幅が広く、体の一部に特徴がある者もいる。独立した力を持つ魔王は危険思想を持ち、自分の種族以外は虫けらのように屠る。寿命は一〇〇〇〜二〇〇〇代。

 古代族。世界を混乱に陥れようとする魔王を討つために、神によって創られた種族。姿形は人族と変わらないが、体の一部に神と同じ若しくは似ているものを持つ。膨大な魔力を持ち、古代語による古代魔法が得意で、神に近しい力を有する。各地に存在した痕跡である遺跡が発見されているが、滅亡したと言われている。寿命は不明。



「――へえ……」

 一般的に知られている古代族の存在は、とうの昔に滅んでいるのか。
 いつから身を隠すようになったのか謎だが、それだけ知られてはいけない種族だということ。
 一般的な常識を得て、続いて各国の歴史を見ようとしたが十八時の鐘が鳴ったので中断した。

「さて。今日の夕飯は何かな?」

 ここの料理は絶品だから期待できる。
 楽しみだと口元を弧にして、部屋から出た。


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