08-02
「それは……お疲れ様」
「ほんと疲れた。なんせ貴族を相手にしないといけなかったんだ。しかも俺より位の高い侯爵だったし……」
「……え? クラウドって貴族だったの!?」
「オリヒオに近いヴェスパー領があるだろ。そこ、俺の兄貴が領主をやってる町だ」
「……マジか。てことは伯爵家?」
「ああ。ま、俺は三男だから自由にさせてもらってるから、こうして冒険者をやってる」
容姿は貴族っぽいし、体格も騎士向きだとは思っていたけど、まさかの伯爵家の三男坊……。
「世の中わからないものだね」
「俺が貴族で冒険者ってことが?」
「うん」
あっさり
「普通の反応だって解ってるけど……俺だけじゃないぜ? アグロティスの領主の子女は公爵令嬢なのに、タラッタの冒険者に入ってるし」
「……はいっ? え、令嬢が!?」
アグロティスとは、バシレイアー帝国の南東に位置する生産都市。帝国の食を大いに
タラッタはバシレイアー帝国の西側にある海に面した
生産都市アグロティスの公爵令嬢が、港湾都市タラッタの冒険者ギルドに入っている。それこそ想像できない。普通、自分の領地の冒険者に所属するものじゃない? いや、貴族の令嬢が冒険者をすること自体が異質のはず。
この世界の貴族って自由すぎないか? 本当にどうなっているんだろう。
「シーナも参加するのか?」
「
「ボソッと怖いこと言うな。つーか殲滅魔術ってどんなんだよ」
「火魔術で一気に燃やす」
「お前ならやれそうで
引き攣った顔でドン引きされた。
とんでもない発言をしているのは自覚しているけど、ドン引きはちょっとショックだ。
「でもま、シーナも参加するなら心強いな」
「えっ! シーナさん、参加するんですか!?」
クラウドの後ろから男性の声が聞こえた。
今度こそ体を向けて、右側の前髪が長いアシンメトリーな
出会った時はアシエリオンの
一見普通の服に見えるが、ちゃんとした魔防具。革のジャケットと革靴と普通のズボンは地属性で強化され、長袖の緑色の服は風属性で風の抵抗を
ニコラス・オーガスト。ギルドマスターであるジュリアの
「あ、ニコラス。久しぶり」
「お久しぶりです。……ではなく、本当に参加なさるのですか?」
「そうだけど、何か
難しそうな顔のニコラスに
「不意打ちとは言え、アシエリオンを倒した貴女です。大丈夫だとは思いますが……今回はディノゾールが二体とリザードマンの群れ。あの時はアシエリオンだけでしたから……」
「今回は他にも冒険者がいるんだし、私だけじゃないから大丈夫でしょう」
私だけで戦うのではないのだと言えば、ニコラスは軽く目を丸くした後、苦笑した。
「やはりシーナさんはお強い。貴女がいれば確実に生存率が上がることは間違いないのですから、応援します」
「ありがとう。ニコラスもここをお願いね」
ニコラスはAランク冒険者。それでも殲滅の依頼に参加しないのは、手薄になるだろうオリヒオを護るため。
何となく察した私の言葉に、ニコラスは嬉しそうに微笑んだ。
「ええ、
柔らかな声音で言葉を返して、ニコラスは受付のカウンターの
恐らくジュリアと話があるのだろう、と察した私は周囲の空気に気付く。
……しまった。目立ってしまった。
ニコラスはAランク冒険者で、クラウドはBランク冒険者。かなり有名な人と軽口を交わして、
思わず逃げるように、受付カウンターにいるハイジへ近づく。
「緊急依頼を受注した後はどこに行けばいい?」
「……あ、えっと……あちらの階段から、二階にある会議室に集合することになっています。……受注致しましたので、どうぞ」
我に返ったハイジが右手を向けて指し示した、酒場の奥にある階段へ行った。
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