08-07
道中にある屋台で食べ物を買い込んで冒険者ギルドに行けば、ハイジが不思議そうな顔で声をかけてきた。
「あれ? シーナさん、どうしました?」
「物資のことで、ジョイに呼ばれてね。今はどこに?」
物資のこと、という内容に首を傾げるハイジ。
「ああ、ちょうどいいタイミングで来たな」
その直後に二階からジョイが下りてきた。
来てくれ、と手招きされて二階に上がれば、テーブルや床に幾つかの木箱が置かれていた。
中には、Bランクの治療薬、魔力回復の魔法薬、毒や麻痺を解除する薬品類、干し肉やドライフルーツ、乾パンといった保存食、テントなど、今回の討伐で必要になる様々な物資が揃っていた。
「できるか?」
「大丈夫」
蓋をして、木箱やテントをアイテムボックスに収納していく。
何度か出し入れして確認が終わると、ジョイは満足そうに頷いた。
「これで全ての物資はアイテムボックスの中だ。今朝言った通り、『氷冷の鉄槌』と【白銀の剣帝】のエドモンと行動するように」
「了解。じゃあ、そろそろ正門に行って大丈夫?」
「勿論だ」
確認を取って、私はギルドから出て正門へ向かった。
正門には幾つかの
じゃんけんで御者役の順番を決めているパーティーメンバーや、話し合ったり模擬戦したりして暇を潰している冒険者で集まっていた。
彼等の視線に入らないように
「ウォーレン。ギルドカードのチェックをお願い」
「……はい、問題なしです。それでその……もしかしてシーナ殿も?」
「まあね」
「……そうですか。ご武運を祈ります」
真剣な顔で応援してくれるウォーレンの気持ちが嬉しくて、ありがとう、と笑顔で礼を言った。
正門から離れて、どの幌馬車に乗ればいいのか思案する。
Aランクパーティー『氷冷の鉄槌』とAランク冒険者のエドモンと一緒に移動だから、彼等を見つけた方が早いのではないか。
「あ、そうすれば良かったんだ」
ふっと浮かんだアイデアに安心して、感じ慣れたエドモンの魔力の方へ行く。
エドモンは正門の近くにある木陰に座り、目を閉じて仮眠をとっている。
……本当に綺麗な顔立ちだ。実際の年齢は三四歳なのに、私の二歳ぐらい上の肉体年齢で止まっているから、余計に。永遠の二十歳と言えばいいかな? いや、まさにその通りだけど。
「……何の用だ」
そんなことを思っていると、エドモンが呟いた。
ちょっと驚いたけど、仮眠だから起きているのも当たり前か。
「アイテムボックスの関係で、貴方と『氷冷の鉄槌』と行動しろ、って言われてね」
「なら、あいつらの所へ行けばいいだろう」
「いや、そんなに親しくないし……」
一度模擬戦をしただけで、たまに一緒に食事に行くネディのように、それほど仲がいい訳でもない。一緒にいても気まずいだけだから、幌馬車に乗ってからの方がいいと思う。
気後れしている私の言葉に、エドモンは薄目を開いて呆れたように言う。
「俺とも、それほど親しくないのではないか?」
エドモンにそう言われて……気付く。確かにそうだと。
同じ共同住宅に住んでいるだけ。
同じ職についているだけ。
同じ、古代族というだけ。
彼は、私が同族だから気にかけてくれている。ただ、それだけ。
エドモンが、私をどう思っているのか何となく察した。
同時に気付いてしまった。私が、エドモンに気を許してしまっていることに。
身内以外で、同じ古代族の友達ができるかもしれない。そんな淡い期待を持ってしまった。
自分が、普通の古代族ではないことを、彼等を看取っていく側なのだと……忘れて。
――なんて、愚か……。
「……ごめん」
少し、息苦しくなってきた。理由が解らないまま謝り、
「待て」
その時、エドモンに呼び止められた。
立ち止まって振り向けば、彼はじっと私を見据えていた。
「……ここに座れ」
「……え? いや、いいよ。そろそろ時間だし」
どういう風の吹き回しだろう。私と彼は親しくもないのに。
……期待なんて、したくないのに。
心を殺してやんわりと断った時、遠くの方で笛の音が聞こえた。
「さあ、出発するぞ! 全員、馬車に乗れ!」
ジョイの呼びかけにナイスタイミングと思いながら、キンバリー達が乗り込もうとしている幌馬車へ向かう。
一台の幌馬車は六人まで乗車できるようで、左側の奥からキンバリー、ジェニファー、マードックが並んで座る。反対側の奥にはジョイがいて、その隣に行こうとした。
しかし、その前にエドモンが幌馬車に入り込み、その隣に座った。
……また隅。まぁ、ありがたいけど。
マードックの正面である右側の後ろに座り、しばらくすると
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