魔女と古代族と精霊と


 ――エルピスカイノス。
 創造神が創り、女神と魔神が様々な種族を管理し、竜神と精霊が秩序を守護している世界。
 地球とは異なる世界の星には様々な種族が存在し、様々な歴史や文化を築き上げている。

 この星の海に浮かぶ大陸は三つ。

 東の大陸と呼ばれる、アマデウス大陸。世界最大と謳われる大陸は緑豊かで自然に溢れ、面積が広い分、国も多い。

 西の大陸と呼ばれる、オプディムス大陸。昔は様々な民族の村や集落があったが、それらを吸収して巨大な軍事国家を作り上げた大国がある。

 そして、魔族が住むという、魔の大陸。南側に位置するこの大陸は、緑豊かな土地や砂漠地帯など様々な土地がある。
 この魔の大陸は、世界中の魔界を統治する魔神の『表』の拠点である。

 この世界の魔神は女神の対として生まれたため、彼が管理する魔族も人類の敵ではない。
 ただし、独立した力と危険思想を持つ魔族は『魔王』と区別される。

 魔王は信者となる無法の魔族をひきいて、己の種族以外は羽虫のように見下し、容易くあやめる。

 移り変わる時代とともに誕生した魔王を看過できない創造神は彼等に対抗すべく、己の力を分け与えた新たな種族を創り、世界に放った。

 古代族。それが、魔王を討つために創造された種族である。
 彼等は創造神と女神に似た、同じものを体の一部に持っている。
 色であったり、体の部位であったり、容姿の造形であったり。
 どうやって彼等はそれを見つけるのか。それは幼少期から少年期の間に見る夢の中にどちらかの神が姿を現し、その姿を記憶させるのだ。

 神と同じものを持つ彼等は、総じて寿命が長い。姿形は人族と似ているのだが、一定の年齢で老化現象が止まり、妖精族の数倍も生きる。

 彼等は特殊な種族である所為で居場所がない。居場所を作ったとしても、他種族に知られると身を隠す。
 そのため古代族は隠匿いんとくの人種と呼ばれ、すでに滅んでいるとも言われている。


 古代族が築き上げた都市は世界各地に遺跡いせきとしてのこっている。その中の一つが、アマデウス大陸の西側の国、その樹海にある。

 バシレイアー帝国。三つの国と同盟を結んでいる世界最高峰の大国。安定した気候で、様々な農産物に恵まれている。西のオプディムス大陸とも近いため、海外の国との貿易ぼうえきも可能。

 四大同盟国の中で群を抜くほど文明を築いている大国。その東側にある鉱山都市オリヒオには、深淵の森という樹海がある。
 世界最大の山脈で有名なフィラカス山脈を囲むように広がる深淵の森には、通常では手に負えない凶悪な魔物が蔓延はびこっている。しかも、フィラカス山脈の頂上には竜種の魔物が住み着いていると言われている。
 そんな危険地帯である深淵の森に踏み込む者はいない。

 ――否、特定の種族は踏み込むだろう。

 深淵の森の奥深くに、古代族の遺跡があるのだ。
 都市と言っても過言ではない広大な町はすたれてしまっているが、立派な神殿がそびえ立っている。


 ある日、その神殿から突如として不思議な光が発生した。




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