宮殿に入って、向かった先は
見回りの衛兵がヴィンス様といる私に疑問を持っていたけど、廊下の
宮殿に入ったのはこれで二度目だけど、前回と違う雰囲気がある。それはおそらく昼間だからというだけではないだろう。
「シーナさんは、確かデオマイ村出身でしたね」
「あ、はい」
「どんな村でしたか?」
突然、ヴィンスさんに話を振られた。
視察の報告より、住んでいた人の視点からの感想も聞きたいのだろうか。
「……
ここで、あることに気付く。
あの村は魔法使いだった祖母と母が護っていた。何かがあれば、村人達は頼ってきた。
二人がいなくなってからは、ほとんど私が密かに倒していた。
村人達の前で活動すれば厄介者を見る眼を向けてくるし、活動しないままで誰かが死んだら私が責められていた。
あの村は私達という『護り』を失っている。
それはつまり――。
「どうしましたか?」
急に黙り込んで立ち止まった私に、ヴィンス様が心配そうに声をかけてくれた。
我に返った私は、深呼吸してヴィンス様に言う。
「ヴィンス様。陛下に頼み事ってできますか?」
「頼み事……ですか? いったいどのような?」
「デオマイ村の人達を助けたいんです」
もう私にはできないこと。そもそも無理があったのだ。
本来なら地元の権力者に頼るしかないけど、私は平民だから面会することもできない。行動に移したくても、私にはその権利がなかった。
できることなら竜帝陛下の手を
真っ直ぐな視線をヴィンス様に向けると、彼は目を
「シーナさん……貴女は
「確かにそうですが、私の心を支えてくれた子供達もいるんです」
一番はあの子達を助けたい。でも、あの子達だけだと、きっと悲しむ。ちゃんと村人全員を助けないと意味がない。
「私では発言権がありません。ですから……」
「シーナさん」
ヴィンス様は私の名を呼んで言葉を遮った。
駄目なのだろうか。そんな不安が押し寄せていると、ヴィンス様は
「大丈夫です。私の権限で、陛下への
「……!」
希望を込めて
よかった……。もう遅いかもしれないけど、あの子達を助けられる。
肩の力を抜いた私に、ヴィンス様は少し呆れたような表情で笑った。
「では、行きますよ」
「はい!」
強く頷いて、私はヴィンス様の後を追った。