小学校生活

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 芽依の宣言通り、結依と有留は鍛えられた。
 死神の基礎である斬拳走鬼を叩き込まれたが、幼い今では限界がある。そこで鬼道を使った遊びで訓練した。

「みぃつけた」

 ぽんっと肩を叩かれた芽依は驚く。

「……思ったより早かったな。どうやって気づいたんだい?」
「芽依さんの霊力を辿ったんだけど……あ、霊絡れいらくって言えばいいんだっけ?」
「……その手があったか」

 ぽかん、とした芽依は苦笑し、結依の頭を撫でる。

「まさか『曲光』を破ることなく見つけるなんて思わなかったよ」br>「変だった?」
「変と言うか、規格外ですごい」

 鬼道には破道と縛道がある。
 今回は縛道の二十六『曲光』を使った隠れ鬼かくれんぼをしていた。
 いつもは結依と有留が隠れているが、今回は試験ということで芽依が隠れていた。

「それで、俺達の試験の結果は?」

 結依の後ろにいた有留が問いかけると、芽依は笑った。

「ああ、合格だ」

 芽依の言葉に「やった!」と結依が喜んで有留に右手をかかげる。
 これまでの経験で理解した有留は、結依の手を叩いた。いわゆるハイタッチだ。
 二人の子供らしい喜び方に、ほっこりと心が温まる。

「次は鬼事。30分間、瞬歩や鬼道で逃げ切ること。それができれば次に移るから、頑張りなさい」
「今から?」
「今から。10数え終わるまで遠くに行くこと。ただし、この町の外は駄目だからね」

 そう言って、芽依は一から数え始める。
 結依と有留は急いで瞬歩を使い、それぞれ違う場所に向かって走った。

 結果、あと10分のところで捕まってしまったのだった。


◇  ◆  ◇  ◆


 季節は巡り、空座南小学校に入学した。
 人間社会の中では退屈な日々だが、放課後になれば芽依との修行がある。
 結依にとって、学校とは窮屈きゅうくつな場所という認識だった。

「今日もつまんなそうだね」

 ぼんやりと本を眺めていると、そんな声をかけられた。
 チラッと見ると、黒い短髪が似合うボーイッシュな女の子がいた。

「……えっと、有沢さん? どうしたの?」
「かたっくるしいなぁ。たつきでいいって」

 有沢竜貴たつき。近所の道場に通う女の子。
 特技は空手で、七歳でありながら実力者だと小耳に挟んだ。

 結依は知っている。彼女がこの世界の主人公の幼馴染だと。

「へえ。あんたってほんとに目、かわってるんだ」
「オッドアイっていうの。日本語では虹彩異色症こうさいいしょくしょうって言うけど」
「こーさい……? むずかしーこと知ってるんだね」

 それはそうだ。結依には前世の記憶があるのだから。
 苦笑する結依に、たつきは首をかしげる。

「一護もへんなかみだし」
「……一護?」
「ほら、あそこにいるよ。オレンジ色のかみの毛の」

 窓側の席を見ると、オレンジ色の髪が特徴的な男の子がいた。
 有留の席の近くに座っている彼は……。

(……黒崎一護、ね)

 この世界の物語の主人公。
 あまり関わる気がないけれど、芽依との修行を考えると、そうもいかないのだろう。
 関わるのも時間の問題かと思いつつ、たつきを見る。

「友達?」
「ちがうよ。道場が同じなだけ」
「ふぅん」

 たつきにとって、友達というより出来の悪い弟分に近い認識なのだろう。

「それはそうと、あんたは志吹と友達なの?」
「うん。有留とは友達だよ。幼馴染でもあるし」

 それがどうしたのだろうか、と思うと、たつきは身を乗り出す。

「この前なんだけどさ、あいつ、五年のセンパイをあっさり倒したんだ」

 たつきの情報に、結依は目を見張る。
 有留は自分のことに関して無関心だから、何かあっても教えてもらうことは少ない。
 ゆえに初耳なのだ。

「あいつさ、何か習ってんの?」

 この質問に言葉が詰まる。
 芽依から戦い方を習っているが、異常な内容のため言えないものが多い。
 なので、習い事の有無という捉え方で答えた。

「……えーっと……道場とか、通ってないよ?」
「ええっ、うっそぉ! あんなにあっさりたおしたのに?」

 たつきは信じられないという顔で目を丸くする。
 気持ちはわからなくもないが、とても話せる内容ではない。

「どんな感じで倒したの?」
「かたてでずだんっ!て」

 有留は幼さに見合わない力がある。相手の勢いを利用する見極めもたくみだ。
 説明は擬音だが、おそらく片手で掴んで地面に叩きつけたのだろうと、なんとなく想像できた。

「何の話をしている」

 その時、話題の中心人物が会話に加わった。

「有留、上級生をあしらったんだって? どうして教えてくれなかったの」
「言って何になる」
「上級生の報復とか心配だから。あと、ちゃんと手加減しているのかなぁって」

 有留の実力をよく知っている結依は、有留より相手の心配をした。
 彼なら心を折るくらい容易たやすいが、それ以上に五体満足で済まない場合がある。
 主に虚が、だが。

「病院送りにならない程度だが……」
「それならいいんだけど」

 結依は少し不安そうに眉を下げる。
 そんな彼女に、有留は不満げに言った。

「何がそんなに不安なんだ」
「あー……うん。集団だと手加減が難しくなると思って。投げ飛ばしたとしても、相手は受け身とかとれないだろうし。首の骨がやられたら、簡単にあの世逝きだから」
「人間とは不便なものだな」
「有留も人間でしょう」

 有留の物言いに苦笑した結依。
 一方、そんな会話を聞いているたつきは……。

「あんたたち、ぶっそーだよ……」

 物々しい会話に引いていた。


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