地の四天王






 魔王の配下で、最も強い四人の魔族――四天王。
 それぞれの能力で特出した強さを持ち、その分野において追随ついずいを許さない。

 田舎者の俺でも知っている情報に、人知れず唾を飲む。

「カイル」

 ぽんっと肩を叩いたのは、聖女イヴ。

「そんなに怖がらなくてもいいですよ。魔王に比べれば弱いですから」

 ニコリと微笑むイヴに、恐怖の色はない。むしろ余裕そう……というか……。

「……楽しそうだな」
「ええ、愉しいですとも!」

 胸を張って言い切ったイヴが頼もしく見えた。
 そんな俺達に、フムスと名乗る四天王は怒りをあらわにした。

「てめえら……俺を馬鹿にしているのか?」
「いえいえ、そんな……ただ、手応えのあるサンドバッグに心が弾んで……」

「「……は?」」

 ウキウキとした笑顔に気恥ずかしさをにじませて言ったイヴ。
 思わず絶句してしまったが、フムスは怒りに顔を赤く染めた。

「て……めえ……舐めんじゃねぐはぁっ!?」

 一瞬、何が起きたのか分からなかった。
 突然、イヴが姿を消したと思えば、フムスが悲鳴を上げて後方へブッ飛んでいた。

 イヴによって、殴り飛ばされたのだと、一拍おいて理解する。

「な、なんだ……痛く、ない……だと?」
「ご安心ください。私は聖女。回復役です」

 フムスの前に立つイヴの顔が見えない。けど、凄くいい笑顔だと察した。

「ですので、治しながら殴れば、どれだけ長持ちするのか知っています」
「ふざけっ……ぐほっ、ゲハァ」

 鈍い殴打おうだの音が響く。女性が作り出す音ではない力加減に、俺まで顔が引きる。

「やめろっガハッ! やめてくだっゲフッ! 許しっゴホォッ! ぎ、ギャアアァー!」



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