水と風の四天王






 仲間に加わった聖女イヴが、魔王直属の魔族の一人を素手で倒した。
 強敵となる四天王の一人をあっさりと泣かせる手腕は素晴らしい。

 けど、俺の出番が……なかった。

「カイル、何を嘆いているのです? これから魔王の城へ向かうというのに」
「……それを楽しんでいられるイヴの神経を疑いたいよ」

 町を転々と渡って物資を揃え、いざ魔王の城へ向かうのだが、やはり道のりは厳しい。
 魔獣を倒し続けて進むこと数日。あと三日で到着するだろう。

 イヴは日に日にワクワクと楽しそうな笑顔を深める。
 対する俺は、死地になるかもしれない敵地に行くことに憂鬱になった。

 悲壮感はない。何故ならイヴという規格外な強者つわものがいるからだ。

 正直に言うと、彼女は頭のネジが数本くらい取れているのではないかと思う。
 敵地だというのに、この底抜けの明るさ。
 理解できなくて聞いてみると……。

「どうしてそんなに楽しそうなんだ」
「だって殴り応えのある人がいますから。普通の人を殴るわけにはいきませんし」

 そこに山があるから登りに行くのだ、というノリだ。しかも、内容が物騒すぎる。
 なんだか、こんな狂戦士バーサーカーな聖女に出会う魔王が可哀想に思えてきた。

「!」

 我に返った瞬間、不穏な空気を感じて立ち止まる。
 俺がそのまま進もうとした先の地面に、爪痕のような深い裂傷れっしょうができた。

 無風だった空間に一陣の風が強く吹く。
 これは……風魔法か?

「へえ。よく気付いたな」

 男の声に驚き、顔を上げる。
 巨大な木の枝に、一人の男が立ち、その隣で女が枝に座っていた。

「僕は風の四天王、ウェントゥス。彼女は水の四天王、アクア。さあ、勇者と聖女。ここが君達の墓場だ」



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