魔族泣かせ






 風の四天王・ウェントゥスと、水の四天王・アクアが現れた。
 俺一人だけでは手に負えない相手だが、こっちにはイヴがいる。
 相手を見る限り、ウェントゥスが男で、アクアが女。いくら魔族でも、女性を傷つけるのは気が引ける。

「イヴ、水の四天王を頼む」
「すぐ片付けますので、終わったら加勢します」

 普通ではありえない発言に苦笑してしまうが、イヴなら大丈夫だと確信する。

「私を……すぐに片付ける? 舐められたものね」

 木の上からアクアが殺気立つ。
 身構えた次の瞬間、ウェントゥスが俺に、アクアがイヴに飛びかかった。

 ウェントゥスは手ぶらだったが、瞬時に風で不可視ふかしの剣を作り、俺に斬りかかる。
 しかし俺は、勇者の剣で受け止めた。

「……へえ。これが勇者の剣か。僕の剣を受け止められる武器はないはずだったのに」
「いやあああああ!」

 不気味な笑みを浮かべるウェントゥスだが、直後の悲鳴で顔色を変える。
 この悲鳴は……水の四天王・アクアのものだった。

「ちょっ、やめて! 触るなぁっ!」
「あらあら。魔族にもぜい肉があるなんて。見た目のわりに太っているのですね」
「お願い! お願いします! 今ここで言わないでぇ……!」

 馬乗りになったイヴは、なんとアクアの腹部や二の腕を触っていた。
 しかも、女性が一番気にする部分を痛烈に指摘して。

「ちゃんと運動している? それとも暴飲暴食なのかしら。魔族のくせに脂肪率が高いなんて笑えますね。不摂生だと殿方に呆れられますよ。ほぉら、ここもぷよぷよ〜」
「いやあああ! ごめんなさい許して! 言わないでください! お願いしますぅぅ!」

 きわどい光景だというのに、あまりの事態に口をあんぐりと開けてしまう。
 ぐすぐすと泣きべそをかくアクアに、ウェントゥスも絶句してしまっている。

 イヴが、こんなにあっさりと魔族を泣かせるなんて……。

 魔族泣かせの聖女。この旅が終われば、彼女にそんな異名が付きそうだ。



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