迫る刻限






 勇者と聖女が魔王城に向かってきている。
 勇者はともかく、聖女も魔獣がはびこる森の中をものともしない。
 むしろ、愉しそうだった。

 これから僕はどうなるのだろうか。ウェントゥスとアクアが倒しに行ったけど、不安が付きまとう。そもそも今回の勇者を倒しても次が現れないか。それが一番心配だ。

 胃が痛い思いで、巨大な水晶に浮かび上がる映像を眺める。
 映像は、ウェントゥスとアクアが、勇者と聖女と対峙たいじしている情景。

「二人の相性とコンビネーションは、我らの中では随一。これで奴らも倒されましょう」

 火の四天王・イグニスが自信をもって宣言する。
 けれど、規格外な存在――聖女がいることを忘れてないかい?

「あまり甘く見ない方がいい。足元をすくわれる」

 おごり、あなどっていては失敗する。それを分かっているのだろうか、四天王達は。
 そんなことを思っていると、イグニスが目を丸くして、キラキラとした視線を向けた。

「さすがは魔王様。思慮が深くいらっしゃる」

 いや、思慮深くないよ? 僕はただ現実的に考えるとそうなるって言いたいだけで。

「参考に、奴らの中で誰が危険なのか、分かりますか?」

 僕にそれを聞かないでくれ。そもそも分かり切っていることを言わせないでくれ。

「……聖女だ」
「は?」

 渋々答えると、胡乱うろんな声を出すイグニス。

 直後、アクアの悲鳴が水晶越しで聞こえた。
 ハッと我に返って水晶に目を向けると、聖女に組み敷かれたアクアが泣いていた。

『本当にやめてくださいぃ……! お願いしますぅぅ……ひっく……!』
『背中のぜい肉も落とさなければ駄目ではないですか。こんなにぷにぷにですのに』
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! お願いだから触らないでぇぇぇ!』


「……は?」

 泣き喚くアクアの姿は、イグニスは予想できなかったようだ。目を点にしている。
 やっぱり聖女怖い。僕は口を引き結び、二人が穏便に帰ってくれることを祈った。



18 / 25
prev | Top | Home / | next