勇者と聖女が魔王城に向かってきている。
勇者はともかく、聖女も魔獣がはびこる森の中をものともしない。
むしろ、愉しそうだった。
これから僕はどうなるのだろうか。ウェントゥスとアクアが倒しに行ったけど、不安が付きまとう。そもそも今回の勇者を倒しても次が現れないか。それが一番心配だ。
胃が痛い思いで、巨大な水晶に浮かび上がる映像を眺める。
映像は、ウェントゥスとアクアが、勇者と聖女と
「二人の相性とコンビネーションは、我らの中では随一。これで奴らも倒されましょう」
火の四天王・イグニスが自信をもって宣言する。
けれど、規格外な存在――聖女がいることを忘れてないかい?
「あまり甘く見ない方がいい。足元を
そんなことを思っていると、イグニスが目を丸くして、キラキラとした視線を向けた。
「さすがは魔王様。思慮が深くいらっしゃる」
いや、思慮深くないよ? 僕はただ現実的に考えるとそうなるって言いたいだけで。
「参考に、奴らの中で誰が危険なのか、分かりますか?」
僕にそれを聞かないでくれ。そもそも分かり切っていることを言わせないでくれ。
「……聖女だ」
「は?」
渋々答えると、
直後、アクアの悲鳴が水晶越しで聞こえた。
ハッと我に返って水晶に目を向けると、聖女に組み敷かれたアクアが泣いていた。
『本当にやめてくださいぃ……! お願いしますぅぅ……ひっく……!』
『背中のぜい肉も落とさなければ駄目ではないですか。こんなにぷにぷにですのに』
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! お願いだから触らないでぇぇぇ!』
「……は?」
泣き喚くアクアの姿は、イグニスは予想できなかったようだ。目を点にしている。
やっぱり聖女怖い。僕は口を引き結び、二人が穏便に帰ってくれることを祈った。