最後の最強






 水の四天王・アクアが再起不能になった。
 風の四天王・ウェントゥスを見れば、奴は赤面硬直。

「な、な、な、な……!」

 発熱したかのような真っ赤な顔で言葉を詰まらせる様子で、気付く。

 こいつ、初心うぶだったのか。

 俺は身動きすらしなくなったウェントゥスに向けて、勇者の剣を振るった。
 刃ではなく、面で。

 ガツンッと後頭部を殴られたウェントゥスは白目を剥いて気絶。
 突っ伏して動かなくなったところで、持参した縄を取り出した。

「ああっ! 酷いじゃないですか、私のサンドバッグが!」
「いや、サンドバッグじゃなくて魔族だからな? それも最強の四天王だからな? あとは……気が引けるけど、そいつも縛ってくれ」
「……はぁい」

 魂が抜けたように動かなくなったアクアの手足を縛るイヴ。縛り方が可笑しい気がするけど、あえて触れない。触れたらいらない称号が付きそうだ。

「……卑怯ひきょうな……」

 いつの間に意識を戻していたのだろうか。
 ウェントゥスが歯軋りして俺を睨み上げる。

「だが、いい気になるのもここまでだ。最後に立ちはだかるのは、四天王の中で最も強い魔族、火の四天王だ。僕やフムスさえ手も足も出ない。そんなあいつの手にかかれば、貴様らなど……!」
「あらあら、まだ元気なのですね」

 歯噛みするウェントゥスの負け惜しみに、イヴがにこりと笑う。
 この笑顔に危機感を抱いた俺は、そっとウェントゥスから離れる。

 胡乱うろんな顔で俺を見遣ったウェントゥスはイヴに目を向け、唖然と口を開いた。

「さあ、愉しい愉しい、エキサイティングな運動の始まりです」

 その手には、物騒なことに、ナックルダスター、またの名を――メリケンサック指の関節につける金属の武器が装着されていた。

「な、何だ、それは!? く……来るな! 来るんじゃない! ぎ……ギャアアアァァ!」



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