火の四天王






 とうとう魔王が住む城の門前に到着した。
 あと少しで旅が終わる。故郷へ帰れるんだ。
 改めて気合を入れ直して一歩を踏み出した――その時。

「来たな、勇者ども」

 門の上から不遜ふそんな声が聞こえた。
 顔を上げれば、燃えるような赤い髪の男が、門の上に立っていた。
 男は、普通ではありえないことに軽やかな音を立てて地面に降り立つ。

 人間業ではない。それにこの威圧感は……風の四天王が言っていた、火の四天王か?

「俺は火の四天王・イグニス。貴様らを殺す者だ。冥土の土産に覚えておけ」

 名乗った直後、イグニスは手のひらを向け、炎を放出した。
 火の魔法だ。しかも、呪文も唱えないなんて。

 放たれた炎は、俺ではなくイヴに向けられていた。
 咄嗟に勇者の剣で抜き放ち、初撃の一閃で炎を切り捨てる。

 勇者の剣は、魔族の魔法に対抗できる。魔力を込めれば魔法すら斬ることができると、これまでの旅で知った。

 いける。そう思ったが、イグニスはこれまでの四天王と違うようで、瞬時に接近して体術による攻撃を繰り出した。

「ぐぁっ」

 剣で防ぐが、イグニスの拳は途轍とてつもなく重く、体が後ろへ吹っ飛んだ。
 なんとか転ばないように踏ん張ったが、その隙にイヴが狙われる。

 イヴは強い。だけど、奴はこれまでと違って別格だ。

 走り出すが、間に合わない。

「イヴ!」

 背筋に悪寒が走るほど危機感を覚え、イヴの名を叫ぶ。


 だが、イヴは……。

「あら……この程度ですの?」

 けろっとした顔で、イグニスの拳を片手で受け止めていた。



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