演目は……?






「さあさあ! 今回はどんな演劇をしたいですか!?」
「私は……白雪姫?」

 舞花が悩みながら言うと、美月は難しそうな顔をする。

「白雪姫って、小人が七人もいるよね。王子とお姫様と女王を含めたら十人も必要だよ」
「あと、白雪姫をねらう>猟師りょうしもな」

 海里が補足すれば、舞花は残念そうに「そっかぁ」とこぼす。
 しばらく悩み、海里が案を出す。

「ロミオとジュリエットはどうだ?」
「結構暗いよ? シェイクスピアの恋愛悲劇で有名だし、ミュージカルで何度も公演されたし」

 なかなか詳しい舞花の指摘に、美月も同感する。

「だよねー。もう少し明るいのがいいかも。……あ。シンデレラは? シンデレラと継母ままははと、二人の姉と王子様と魔法使い。人数的に、ちょうどいいよね」
「確かに」

 この場にいないが、あともう一人の部員がいる。その部員も含めれば、ちょうどシンデレラを演じられる。
 美月の発案に同意した明良は、黒板に書いた『白雪姫』と『ロミジュリ』の下に×印をつけ、その隣に『シンデレラ』と記入。

「俺的にはドラクエも有りだと思うんだけどなぁ……。3作目は性別とか自由に決められるし」
「……あぁ、ドラゴンクエスト? 今、11作もあるんでしたっけ」

 海里が思い出して訊ねると、明良は「そう」と頷く。

 ドラゴンクエストとは、日本でも代表的な長寿ゲームの一つ。一般的に『ドラクエ』と呼ばれ、幅広いシナリオと性能からゲーマーの間では今も人気が根付いている。

 明良もドラクエにのめり込んでいるファンの一人。3作目で様々な設定を決められることを知っているため、これも採用できそうだと思ったのだ。
 だが、演じられるのは一つだけ。部員は演じやすいものを選ぶだろう。

 残念そうな明良の表情を見て、芽久はある提案を出した。

「なら、いっそのこと合わせるのはどうだ?」

 様子を見ているだけだった芽久だが、初めての発案で全員を驚かせる。

「シンデレラを勇者に、とらわれの姫を逆に王子にすればなんとかなる。魔法使いはシンデレラの物語に一人いるんだ。敵は継母役と姉役にしぼればどうとでもなるはずだ」

 この発想はなかった美月達は目を丸くする。
 明良はと言うと、瞳を輝かせて満面の笑みを浮かべていた。

「芽久ちゃん最高!」
「ちゃん≠付けるな」
「じゃあ、シナリオはあの子に頼むとして……役はどうしようか?」

 テンションが一気に高くなった明良に何を言っても無駄だ。
 重々しく溜息をつく芽久だが、不意に顔を上げる。
br /<>「ふはははっ! 聞かせてもらったわよ!」

 突如とつじょとして悪役のような笑い声が聞こえた。
 スパーンッと大きな音を立てて開いた扉を見れば、一人の少女が仁王立におうだちしていた。

 日差しによって栗色がかかるナチュラルブラックのポニーテール。華奢きゃしゃだがグラマーな体型もあり、クールな芽久とは違った美女を体現した女子生徒。

 千堂せんどう琴音ことね。芽久のクラスメートであり、親友だ。

「琴音……いつからそこに?」
「ついさっきよ。それにしても芽久、あなた天才!」

 教室に入ってきた琴音は、芽久の強く肩を叩いた。バシィッという痛々しい音に引きつる美月と海里だが、芽久は表情を一ミリも変えない。むしろ、いつものことだと受け入れているようだ。

「この映画研究部の部長が協力してあげるわ。ただし、協力ついでに撮影させてね」
「いいのか? そっちは五人しかいないのに」
「大丈夫。監督かんとくの私と、カメラマンとマイク係がいれば。あとの二人は敵役にしていいから。撮影後に効果エフェクトやモンスターの映像を組み込むのは得意なの、私」

 自慢じまんげに胸を張る琴音に、美月と海里は「おぉ〜」と感嘆の声を上げた。
 特に肩を震わせた明良は、感激のあまり琴音の手を握って上下に振った。

「最っ高だ! ぜひとも頼む! シナリオはあの子に任せるから!」
「ええ。演劇部と映研部の合作よ。全力を尽くすわ」

 にこりと綺麗に笑った琴音。


 演劇部は知らない。映画研究部の部長は、映画に関して熱意がすさまじいことを。



◇  ◆  ◇  ◆




2 / 25
prev | Top | Home / | next