イグニスで思う存分に遊んで、すっきりした笑顔を浮かべる。
勇者である俺は、そんなイヴに恐ろしいものを感じてしまった。
「さあ! 最後は魔王です。きびきび行きましょう!」
どうしてピクニックに行くような軽い乗りなのだろう。
遠足は帰るまでが遠足です、という言葉をきっちり守る子供のような無邪気さだ。
「ノリが悪いですよ、カイル。さあ、出発です! オー!」
「……オー」
心底楽しそうに拳を空に向けて突き出し、イヴは魔王城へと歩き出す。
本日何度目かの溜息を吐き、俺も城内へ踏み込んだ。
城の中は、人間の城のような
広い廊下に汚れたカーペット。蜘蛛の巣が張り巡らされた天上。廊下のあちこちに
殺風景ながら
「なあ。イヴはどうして魔王を倒したいんだ? ただ暴れたいだけじゃないだろう」
これまでイヴは、ただ戦うためだけに旅に同行しているという態度を見せてきた。
けど、時々暗い表情をする。そう……今のように、落ち込んだ表情を。
「……お気付きでしたか。実はですね、故郷を魔族に壊されてしまったのです。その時、一人で魔族を殴り倒したのですが、故郷の皆さん、私を怖がってしまって……。それで各地を転々として、最終的にカイルと出会った町のお隣で聖女として過ごしていました」
思った以上に暗い過去だった。
彼女は俺と違って流されたのではなく、復讐のために旅に同行したのか。
「ですが、恨みはありません。あの時がなければ、故郷から旅立つことはなかったのですから。むしろ私のような方が増えないように……そう思ってご一緒させてもらいました」
イヴは、晴れ晴れしい笑顔で言い切った。
魔族に故郷を壊されて居場所を失ったのに、恨んでいない。むしろ、それを
その在り方が、とても眩しく見えた。