「あ、見えてきましたね。……魔王の部屋に」
過去を語り、未来を見据えるイヴに見惚れているうちに、とうとう魔王のいる部屋の前にたどり着いた。
どうして分かるのか。それは、部屋の外まで漏れ出る禍々しい魔力の気配のおかげだ。
「3、で行くぞ。1……2……――3!」
部屋の扉を勇者の剣で破壊して、派手に突入した。
瞬間、ブワッと強い風が俺達を襲う。だが、この風は魔法ではないようだ。
「くぅっ、な、何だ……!?」
腕で顔を庇い、咄嗟に踏ん張った俺は腕の隙間から前を見る。
部屋の奥には玉座があった。そこに座っているはずの
よく見ると、それは国旗に使われても可笑しくない上等な
どうして大きな旗を振っている? しかも旗には「
「……は? 降参……?」
思わず声に出してしまった。
風を起こしている魔王は、俺の小さな呟きを聞き取ったようで、旗を下げた。
ふぅ、と額に浮かんだ汗を拭いながら。
「すまない。これ以外に、君達の戦意を無くす方法が分からなかったんだ」
気さくな態度で謝る魔王は、どこか気弱そうな笑みで言った。
……ん? こいつ、魔王だよな? 何でこんなに幸薄そう……というか弱そうなんだ?
「……ええと、どういうことだ?」
困惑しつつも問いかけると、魔王は拳を握り締めた。うるっと、目を潤ませながら。
「よく聞いてくれた……! 僕はね、本当は喧嘩とか争い事が苦手なんだ! なのに部下と公言する魔族達が自分勝手に暴れまくって……!
厳つい顔なのに、一人称「僕」なのか。それにその口調、外見に合ってない。
ちぐはぐな中身をした魔王の正体は、気弱でヘタレな苦労人だった。