――魔王の配下を打ち倒したシンデレラ達は、魔王城の最上階へと向かう。数ある部屋の中からリーオーの魔法で探し当て、その一室の扉へ辿り着いた。
重厚な扉の前に立つ、シンデレラ、リーオー、ドロシー。
三人の顔は、死地へ向かう者のそれではない。確かな希望を秘めた戦士の顔つきだ。
「二人とも、覚悟はいい?」
「ああ」
「もちろんよ」
シンデレラが声をかけると、二人は恐怖を感じさせない強い声で返す。
リーオーとドロシーの覚悟が伝わったシンデレラは笑みを見せ、そして静かな表情で深呼吸をして――顔を上げた。
「勝ちましょう」
確かな声で告げ、勢いよく扉を開いた。
そこは書斎だった。壁一面の本棚の奥には厳かな机があり、ゆったりとした上質な椅子がある。
魔王は、その椅子に座らずに机に寄りかかっていた。
「来る頃だと思っていた。勇者
高い位置に結い上げた髪を肩から払い、
これまで出会ってきた権力者とは違う風格を感じたシンデレラ達は、一気に緊張感を高める。
各々の武器を握って構えた――その時。
「魔王様。お茶の用意ができた……」
のんびりとした声に、一気に緊張感が抜ける。
ガクッと体勢が崩れたシンデレラは、勢いよく振り返る。
開いたままの扉から、ひょこり、と顔を
「お……王子様!?」
「えっ!?」
「なっ……!」
真っ先に我に返って叫んだのはドロシーだった。
連鎖反応で驚愕の声を上げるシンデレラとリーオー。
その声で、ハッと硬直が解けた王子は駆け出して――魔王に抱きついた。
「魔王様! 怪我は!? まさか、
「いや、大丈夫だ」
必死な表情で魔王に問い詰める王子。その親密な関係に、シンデレラ達は
攫われたはずの王子が魔王と親しい? いったいどういうことだ。
同じ疑問に寄って混乱する三人。その中で、シンデレラが恐る恐る声をかける。
「あの……王子、様? 魔王……ですよ……?」
「……それが何?」
じろっと
「囚われていたのでは……」
「最初は。けど、今は――」
困惑するシンデレラ達に言いかけた王子。だが、魔王が彼の肩を抱き寄せることで止めた。
「彼は私の婚約者だ」
――投下した爆弾は、とてつもない破壊力があった。
頬を赤らめる王子。その様子で嘘ではないのだと悟った三人は、たまらず絶叫。
「え……えぇえええええ!?」
「うそ、そんなことって……」
「ま、待って! 君達は男同士だろ!?」
混乱するシンデレラとドロシーとは違い、冷静なリーオーが問題を
しかし、王子は
「恋愛に性別は関係ない!」
……とても、いい笑顔で。
愕然と口をあんぐりと開ける三人に、魔王は王子の頭を撫でながら言う。
「そういうことだ。君達の働きは無駄だったわけだが……」
「……ま、待って! 私は……お父様の仇のために……!」
グッと剣の柄を握って構えるシンデレラに、魔王は「あぁ」と思い出したように告げた。
「あの勇者の末裔を殺したのは、君の継母だよ」
私は止めたんだがな……と嘆息する魔王の言葉に、シンデレラは衝撃のあまり茫然とした。
ガシャン、と勇者の剣が床に転がるが、ショックが強すぎた
「そん、な……」
呟いたシンデレラは、不意に目的が果たされていたことに気づく。
シンデレラの父親を殺したのは魔王ではなく、自分の継母。継母はドロシーによって討たれた。
憎いと思った相手を、自分で仇を討つことは最早できない。
途方もない
そんなシンデレラを見下ろしたリーオーは、彼女の傍らに膝をつき、目線を合わせる。
「シンデレラ。君を導くと言っておきながら、心を守り切れなかったことを謝らせて欲しい」
「……いいえ。これは私が選んだことだもの……」
力無い声でもしっかり言葉を返す。
痛々しい姿に同情してしまうが、リーオーは決意を込めた眼差しでシンデレラの手を握った。
「シンデレラ。もし君が良ければ、俺と――」
――それから月日が経ち、魔王と王子は結婚式を挙げました。反感は多少なりともあったが、国の政策に積極的な魔王の努力によって認められたのでした。
教会の奥から出てきた魔王と王子。普段とは違う白いタキシードを着こなし、腕を組んでいる。
入口にいるシンデレラとリーオーとドロシーは、旅の間に着ていた服を纏って結婚式に参加していた。
王子が手に持っている花束を投げる。空高く飛んだ花束は、シンデレラの手の中に納まった。
驚くシンデレラに、王子はパチリと片目を閉じる。
「今度は君達の番だよ。勇者シンデレラ、魔法使いリーオー」
王子の言葉に赤面するシンデレラ。リーオーは微笑ましく微笑し、強く頷いた。
――あの旅から、シンデレラと魔法使いリーオーは恋人になりました。
――こうして、勇者シンデレラの冒険は幕を閉じたのでした。