加わった護衛
綱吉が球技大会で活躍した翌週の月曜日。
うるさいのは嫌い。
でも、そろそろ綱吉に部下こと忠犬君が現れるし、今週末にはあの野球少年とも友達になる。
余計に綱吉と一緒にいられなくなるのは嫌だけど、物語を考えると避けられない現実。
複雑すぎて、なんだか嫌になってきた。
そんな気持ちを抱えながら過ごしていたけど……私にも転機が訪れた。
並盛中学校に登校して席について、日課の読書から始める。
静かに読み進めていると、担任の榊先生が教室に入ってきた。
「今日は転入生を紹介する。入ってくれ」
……んん? 転入生? A組だけじゃなくて?
怪訝な顔になりそうだけど抑えて様子を見ると、教室に驚くべき人物が入ってきた。
金髪にロイヤルブルーの瞳の美少年。
銀髪に金色の瞳の中性的な美少年。
銀髪の子は知らないけど、金髪の子は見慣れている子で……。「イタリアから引っ越してきた、アルド・ダンブロージョと、ティート・サントラムだ」
……マジっすか。
驚きのあまり目を丸くして凝視していると、アルドはクスッと笑う。
はっきり言って、アルドは美人だ。ただ笑っただけで女子生徒のほとんどが目をハートにするほどだから。
「オレはアルド・ダンブロージョ。気軽に名前で読んでくれ」
「僕はティート・サントラム。よろしく」
ニコリと笑ったサントラムに見惚れる人続出。
彼もボンゴレ関係だと思うと気が遠くなりそうだ。
私はひっそりと重々しく溜息をついた。
アルドとサントラムは上手に質問攻めから逃れて、私をこっそり誘って屋上に行く。
夏の風が心地良い屋上に出ると、私から切り出す。
「聞いてないんだけど」
「ハハッ、ドッキリは成功したみたいだな。実は9代目からの指示なんだ」
ティモさん、いくら何でも私の平穏をぶち壊そうとするな。
顔に手を当てて頭痛に耐えようとする。そんな私を見ていたサントラムは不思議そうな顔になった。
「思ったより普通だね」
「……普通だとよかったんだけどね」
溜息混じりで言って、改めてサントラムを見る。
「私は氷崎六華。はじめまして、ボンゴレの一員さん」
普通に挨拶すれば、サントラムは目をぱちくりさせる。
サントラムがアルドに視線を向ければ、彼は苦笑して頷く。
「さすが察しがいいな。ティートは君の護衛に選抜された優秀な奴だよ」
「……護衛なんていらないんだけどなぁ」
思わず溜息が出てしまう。
本当にいらない。私の平穏を返せ。
と、その前に……。
「サントラムもごめん、私の事情に巻き込んじゃって。断っても良かったんだよ?」
「い、いや……。普通は喜ぶはずだけど……」
「何で喜ばないといけないの。平穏が崩れるなんて喜べるわけないよ」
確かにこんな美人さんが守ってくれると女子は嬉しがるだろうけど、私は違う。
平穏第一に考えているからこそ、護衛なんて望んだことはない。
それに、超能力を持っている上に鍛えているから大抵のチンピラは倒せる。
私の実力を知っているアルドは複雑な表情で笑っている。
「六華らしいな。でも、これがオレ達の任務だ」
「……はぁ、わかった。ただし、無理に護衛しなくていいから。ゆとりがないと心に毒だし」
私は今までゆとり重視で頑張っている。おかげで伸び伸びとした生活ができているから、案外捨てたものじゃない。
「それと、私は護られるだけなんて嫌だから。背中合わせが理想だからね」
きっぱり言えば、サントラムは目をぱちくりさせた。
意外なのだろう。護衛対象がこんなだから。
「……あははっ。なるほど、アルドが姫って呼ぶだけある」
「……は?」
姫? 私が? ……アルド、変なあだ名つけやがって。
アルドをギロッと睨めば視線を逸らす。目を合わせやがれ。
――ドドォンッ
「「「!!」」」
その時、巨大な爆発音が聞こえた。
……あれが獄寺隼人か。随分難儀な子だな。
他の場所を見れば、黒いスーツ姿の赤ん坊がいた。
あれが、綱吉の家庭教師にして……。
「アルコバレーノのリボーン、か……。厄介事が降りかからないといいんだけど」
ちょっと憂鬱になって、小さな溜息をついた。