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並盛中学生徒会長

 並盛中学校。不良の巣窟として有名な不良校。
 だが、それは一年前までの話。ある帰国子女の転入生が、転入直後に生徒会を改変したことがきっかけだった。

 当時の生徒会は不良が取り仕切っていた。予算の横領なんてことは日常茶飯事。
 手入れをして、生徒会長の座を譲ってもらってからは、ある程度一変した。


 その転入生の名は――ジョット・レオネッティ。

 つまり、オレだ。


「会長! お疲れ様です!」

 二年次に上がって一ヶ月が過ぎた。
 午前中と午後は授業、昼休みと放課後に生徒会活動。
 去年より負担は軽くなったが、やはり多忙なことに変わりない。何せ、あの問題児が一年次にして風紀委員長の座をぶんどったからだ。

 雲雀恭弥。オレの幼馴染の幼馴染であり、オレの現在の友人。

 地元の総合武道館の師範代である女性が直々に指南したため実力は相当なもの。不良の頂点に立つほど最強で最恐。

 暴君なあいつと、品行方正で人望が厚いオレ。

 馬が合わないと思われがちだが、実務に関しては気が合うし協力的。
 まるで前世の仲間に似ているような……似ていないような……。

「また風紀委員ですか?」
「いや、今回はボクシング部の部長だ」
「ああ、笹川了平ですね。もしよろしければ、こちらを」

 現在、生徒会を回しているのは、オレと西川にしかわつとむ
 オレより年上の三年生だというのに低姿勢なのは、オレが前任生徒会長を倒したから。
 以来、強さだけではなく並盛中学校を立て直したオレを一番支持している。

 そんな西川が差し出したのは、並盛中ニュース五月号。
 見出しは『ボクシング部、交流試合の日迫る! 期待の新人の参戦も!?』。


『不良生徒が多くいたことで、評判の悪かった並盛中ボクシング部。廃部の話も持ち上がっていたが、以前からお伝えしている通り、部長になった笹川了平くんのがんばりで、いまでは真面目に活動するクラブへと生まれ変わりつつある。
 来月には、ヒスイ中ボクシング部との交流試合も予定されている。これまでなかなか他校も相手をしてくれなかったのだが、最近の変化もあって今回二年ぶりに試合が行われることとなった。
 この交流試合が、ボクシング部の復活を広く知らしめることになるのは間違いなく、笹川くんもいままで以上にはりきって部活動を――――』


「……なるほど。戦力集めか」

 ヒスイ中は強豪だ。今の並盛中のボクシング部では歯が立たない。いくら風紀副委員長と互角で戦える部長であっても、一人で勝ち残ることは難しい。

「笹川も焦っているようですけど……だからといって会長を勧誘なんて……」

 顔をしかめる西川。したってくれる気持ちは嬉しいが……。

「気持ちはわかるから、そこまで気にする必要はない。それに、今は草壁を標的にしているはずだ」

「雲雀恭弥ぁぁぁーーーーーーーーっ!」

 遠くから暑苦しい雄叫びが聞こえた。
 今話題の笹川了平だ。恭弥の名を叫んでいるが、実際はその風紀副委員長・草壁哲矢に絡んでいるのだろう。

「勘違いもここまでくると、いっそ清々しいな」
「まったくです」

 苦笑するオレに、西川は強く頷いた。



◇  ◆  ◇  ◆



『並盛中ニュース 6月号
 風紀委員、校則の取り締まりを強化!
 並盛中に広がっていく見えない反感?

 このところ、風紀委員による校内での取り締まりが目立つようになっている。夏でも変わらない学ラン姿は、それだけで一般生徒を恐怖させるのに十分だ。
 しかし、あまりに高圧的な風紀活動には反感も大きく、近々、風紀委員を敵視する不良生徒たちが、動きを見せるというウワサも――』


「……ハァ。やっぱりそうなるか」

 ――並盛中ニュース六月号。その修正前の記事を読んで溜息を吐く。

 恭弥がしていることは独裁者のような恐怖政治だ。そのせいで本人の知らないところで反感を買い、反発する者が増える。敵視する不良生徒が動き出しても不思議ではない。

「……?」

 ふと、大勢の足音を耳にした。
 生徒会室は校舎の最上階にある。そのため、行先は屋上だと判る。

 嫌な予感が過り、生徒会室から出た直後、争う音と怒鳴り声が聞こえてきた。
 乱闘だ。確か屋上は恭弥のテリトリーだが……。

「……まさか」

 以前、屋上で笹川了平と会ったと恭弥から聞かされた。あの時は不機嫌そうで、ストレス発散にオレとスパーリングするよう強制された。
 また笹川了平がいるのではと直感が告げ、急いで屋上へ向かう。


 ――そこでは大勢の不良が、一人の男子生徒を袋叩きにしていた。


 被害者は、一年生の笹川了平。

 加害者は、雲雀恭弥を敵視する不良生徒、およそ五十人。


「何をしている」


 腹の底から怒りが込み上げて、そのまま声に出す。
 半数近くがボロボロだが、もう半数は厳つい顔でオレに振り向き、そして引きつる。

「て、てめえは……!」
「一人に寄って集って、何をしているのかと聞いている」

 ズボンのポケットに常備している物を取り出し、両手につける。
 それは、革製の黒いグローブ。
 前世のものと少し異なるが、今世でも一番しっくりくる武器だ。

「……聞くまでもないか。おおかた雲雀恭弥に用があったのだろう。だというのに何の関係もない下級生を痛めつけるのがお前達のやり方か」
「ごちゃごちゃうるせえ!」

 一人が鉄バットを振り下ろす。それを片手で受け止めると、不良は驚愕に目を見開く。

「決め手だな」

 呟き、不良の鳩尾に正拳突きを叩き込む。

「ごばっ」

 不良は後方へ飛び、数人を巻き込んで倒れた。
 怒りに顔を赤くする者もいれば、恐怖から青ざめる者もいる。

 奴らに慈悲はいらない。


「さあ……次は誰だ?」


 こうして、不良生徒へ制裁を下した。



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