「重そうだな。持ってやるよ」
そう言って荷物を持ってくれたのは池袋の自動喧嘩人形こと平和島静雄だった。
「しずおさん、なんでそんなやさしいんですか?」
「優しいか…?」
「ええ、とても。たすかっていますわ」
荷物をちら見して頷く。
あー、あのよ…と静雄は言い淀み、
「臨也の野郎に何もされてねぇだろうな」
「え、……………はい」
キスの件を思い出して返事が遅くなる。
あの過剰なスキンシップを。
「なんだ今の間は。やっぱり何かされたんだな。よし、潰す。めらっと殺す」
「いいですけど、やるならちりになるまでやってください」
「おう」
では私こちらですので、と静雄から荷物を取り上げてしっかりと持つ。
「あの、しずおさん」
「あ?」
「はなしてくれないとかえれません」
「ああ、悪い」
握られたワンピースを、ぱっと離す。
「またすぐあえますよ」
「…だな」
ドン、と静雄の身体が人にあたる。
「いってぇー!」
「おいおい、兄ちゃんよお。こいつの肩が壊れちまったじゃねぇか。どう落とし前つけてくれんだ?あ?」
ヤンキーらしき人が静雄に詰め寄る。なんとも古典的な三文芝居だ。しかし静雄は"壊れた"という言葉に謝罪を述べる。
「ごめんで済むならポリなんていらねぇんだよ!慰謝料払えや慰謝料!」
「ちょっとおにいさんがた」
「あ?ガキは引っ込んでろ!」
「そんなかんたんにかたなんかこわれません。いいがかりはやめてください」
「なんだと?」
「おい、××…」
「やるならぜんりょくでおあいてしますよ」
「なめやがって!このクソガキッ!」
黄色いスカーフを巻いた男が××に殴り掛かって来る。
それをひらりとかわして蹴りを顔面に喰らわす。
ぐがあっ、と男は呻く。
「くそっ!」
ぶつかった方の男がナイフを取り出して迫る、迫る。
「××!!」
「…っ、」
屈んで避ける。
くるり、振り返って股関を蹴る。
やはりこの身体では威力が足りないのかすぐに先程倒れた男が迫って来る。
遠くにいた黄色い男達も集まって来た。
「ああもう!キリがないっ!」
殴り蹴りを繰り返していると、人が宙を舞う。
静雄が加勢に加わったのだ。
「大丈夫か?××!」
「これでもきたえてるからね」
背中合わせに会話を交わして各々がそれぞれの攻撃を繰り出す。
「俺に」
「しずおさんに」
「「暴力を使わせやがって!!」」
黄色い男達の中の1人がハッと息を呑む。
「こいつら、平和島静雄と××じゃねぇか!」
「マジかよ!?やべっ、ずらかるぞ!!」
気絶した男を2人掛かりで運び、走り去って行く。
「怪我ないか?」
「もんだいないわ」
パンパン、と服を払って陰に置いた荷物を持つ。
「よかった、たまごはぶじね」
「それよりお前の心配だろ!本当に怪我はないのか!?」
「しんぱいしすぎ。だいじょうぶよ」
ナイフが切った衣服をぎゅっと握る。
怪我は早くも薄い瘡蓋に覆われていた。
ぱっと見、怪我はないように見える。
「しずおさん、きをつけてかえってくださいね。まだこうきんぞくがうろついてます」
「お前もだろうが。ったく、無茶しやがって」
こつん、と小突かれる。
「じゃあ、こんどこそ、またね」
「おう」
××は池袋駅を目指して歩いて行く。
「ただいまー」
マンションに辿り着き、荷物をおろす。
「お帰り、××ちゃん」
荷物を持って2人で居間に向かった。
「××ちゃん、腕出して」
「……………はい」
盗聴器の存在をすっかり忘れていた××は口端をひくつかせて腕を差し出す。
「君のその異常に早い回復力には関心するけど、少しはただの女の子だと自覚しなさい。ほら、包帯巻けたよ」
「ありがとうございます」
「その腕じゃ料理は出来ないね。俺が作るよ。パスタでいい?」
「そんなっ、わたしつくります!」
「新羅につき出されるのと、大人しくしてるのどっちが良い?」
「おとなしくしてます」
即答し、クッションを抱きかかえる。
「カルボナーラがいいです」
「はいはい」
今晩の料理は久々に臨也の手作りだ。
わくわくしながら、襲い迫る睡魔に身を委ねた。
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