池袋に久々の快晴が訪れた。
青空の下、××は来良学園の門の前で立ち尽くしていた。制服で下校する生徒に混じるロリータ服の少女は誰が見ても嫌という程、目立っていた。それでも構わないらしい××は目当ての生徒が出て来るまで待つ。
視界に捉えた制服の男女を見て、ぶんぶんと腕を振る。
「ちょっといいですか?」
「えっ、ああ、僕は良いけど…」
「…私も大丈夫です」
「ここではなすのもなんですから、きっさてんにでもはいりましょう」
学校近くの喫茶店に入った3人は窓際のテーブルへと案内された。メニューを手に取って軽食を注文していく。
「××さん、ですよね」
「はい。そういうあなたがたはりゅうがみねみかどさんとそのはらあんりさんですね」
「どうして私の名前を…」
「あかばやしさんをごぞんじでしょう?すこしおせわになっていたことがありまして、それで」
「そうだったんですか」
「僕のことは?」
「それは…」
ガタン、と椅子を引く音がして、そちらに目を向けると杏里が立っており、
「すみません。お手洗いに行ってきます」
足早に駆けていった。
帝人に視線を移す。
「あらためて、はじめましてというべきかな?たなかたろうさん」
「…っ!」
「あははは、そんなにみがまえないでくださいよ。あなたとこうしておあいするのははじめてですが、はなしはしたことがあるんですよ。もうしおくれました、わたし、こはくとネットではなのっております」
「あの琥珀さん、ですか」
「あの、というのがどのこはくをさししめしているのかわかりませんが、きっとあなたのおもいうかべるこはくでそういないかと」
「ネット弁慶っていう訳でもないんですね」
ホッと安堵する帝人に××は微笑む。
「いぜんはこうないでめがあいましたよね。わたし、4がつかららいらにかようつもりでじゅけんべんきょうしています。うかれば、せんぱい・こうはいのかんけいですね」
「失礼を承知で言いますけど、幼く見えますよね。琥珀さんって」
「オフですので××とよんでくださってかまいません。そうですね…よくいわれます」
「ゾンビって本当ですか?あの写真は一体…」
「ぐいぐいきますね。あれはほんとうです。しょうこをおみせできないのがざんねんですが」
「ただいま戻りました…」
杏里が戻るのと同時に注文した品が運ばれてきた。早速、××はクレープに手をつける。
「ん、おいしい」
「園原さんと繋がりがあるっていうのはどういうことなんですか?」
「いちじきひきとられていたんです。おやこのようによくしてくれました。そのはらさんのこともはなしをきいてしったんです」
もぐもぐと口を動かしながら説明していく。成程、と納得する2人に××は苦笑して、
「まあ、すうしゅうかんでうられたんですけどね、おりはらさんに」
「…!」
「えっ…それって人身売買じゃ…」
「よくあることです」
あっけらかんと言い放つ××に帝人は眉間に皺を寄せて続ける。
「そういう繋がりだったんですか」
「すべてはおりはらさんのてのひらのうえです」
その言葉に帝人は心底嫌そうな顔をした。
「逃げようとはしなかったんですか?」
「まさにきのう、にげていました。でもあっさりみつかっちゃって。けいたいでんわをすてるわけにもいかなかったので」
頼れる人は数える程しかいないんです、と××は寂しげに笑んだ。
「ごちそうさまでした」
「ご馳走さまです」
「ご馳走さまでした」
大差ない間隔で料理を平らげ、手を合わせる。次はどうしましょうか、という話題になり、帝人が口を開く。
「うちに来ませんか?」
「おじゃましてもいいのかしら」
「大した持て成しは出来ませんが、××さんさえ良ければ」
「じゃあごやっかいになろうかな」
喫茶店を出て、夕陽に照らされた池袋の街を歩く。
「私、こちらですので…あの、楽しかったです、××さん。受験、頑張ってください」
「きたいにこたえられるようがんばるわ」
握手を交わして杏里の背中を見送る。
「さて、たろうさん」
「帝人で良いですよ」
「みかどくん。きみのすんでいるばしょはしっているわけだけれども」
「折原さんの情報ですか…」
「さすがにいえにおしかけるわけにもいかないから、こうしてきょうみたいにがっこうでまっていたのよ」
「そうしてください、是非」
「ふふ、そのへんのじょうしきくらいもちあわせているわ」
並んで歩きながら、話を進める。
「××さんは折原さんにチャットを紹介してもらったんですか?」
「そうよ。やってるうちにやみつきになってきてね。じょうほうもえられるし、なによりみんなとはなすのがたのしいの」
「分かります。楽しいですよね、チャット」
「いっしょににゅうしつしてみる?」
「セットンさん、驚くだろうなあ」
──田中太郎さんが入室されました──
【こんにちは】
[こんー]
《こんにちは☆》
【先程、琥珀さんと会いまして】
[えっ、じゃあ今は一緒にいるってことですか?]
《太郎さん強引に誘ったんですかぁ?きゃっ☆大胆☆》
【ちょっと甘楽さん。何言ってるんですか。強引になんて誘われてません。普通にです】
[今のは琥珀さん?]
【ですです】
《ややこしいですね☆太郎さんと一緒に居るんですかぁ。ちょっと妬けちゃいます》
【は?】
【あ、いえ、何でもありません】
[琥珀さんwww本音ww]
《酷いですぅ》
【代わりました。甘楽さんいじけないでください】
内緒モード《早く帰って来なよ》
内緒モード《たっぷり話を聞いてあげるから》
【甘楽さんが琥珀さんに対してセクハラを】
[ちょwww]
《言い掛かりです、えーん》
【まあ、それはそれとして。琥珀さんが1人で人生ゲームをやり始めました】
[1人でってwww]
《琥珀さんなんて人生ハードモードで詰んでしまえばいいんですっ!》
【まあまあ。では人生ゲームに付き合うので落ちますね】
[おつー]
《お疲れ様です☆》
──田中太郎さんが退室されました──
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