「最近喧嘩しがちなものでして」
「ほう。それでお姫さんを私達の元へ預けたいと?」

××は粟楠会の一室で淡々と語られる言葉を耳にしていた。

「それに私にもそろそろ大きな問題が出てくる。一々構っている暇などなくなるでしょう」
「分かりました。暫くの間、お姫さんをお預かり致します。300万でどうですか?」
「では交渉成立ということで」

二人は固く握手を結んだ。
××はその様子を静かに眺めていた。





「ではおりはらさん、しばらくのあいださよならです」

深くお辞儀をしてニコリと笑顔を作る。
臨也は相変わらずの無表情で、

「ばいばい」

そう言って粟楠会を出て行った。

「お姫さん」
「は、はい!」
「久しぶりだねぇ。そんなに緊張することはないさ」
「はい」
「寂しいかい?」
「すこし…」
「なあに、おいちゃん達は預かっただけで買い戻したわけじゃない。そのうち迎えに来るさ」
「そう…ですね。わたしはなにをやればよいのでしょうか?」
「四木さんにお茶を淹れてやってくだせぇ。家具の配置は前と何も変わってませんので」
「わかりました」

手際良くお湯を沸かし始める××。
赤林はそれを見守っていた。

「お二人が喧嘩なんて珍しいものじゃあないですか」

ぽつりと呟いた言葉は××には届かなかった。





「しきさん、おちゃどうぞ、です」
「ありがとうね」

撫でられ、ほにゃりと笑顔を溢す。

「わたしにできるおしごとありますか?」
「重要機密ばかりだからねえ。黒バイクと接点あるんでしたよねえ、確か」
「あります」
「蟹を届けてもらうよう指示するから受け取ってくれないかい?」
「わかりました!」

粟楠会の人達は本当に蟹が好きなんだなぁ…なんて思いながら部屋を後にした。
赤林の居る部屋で少し待っていると、

「黒バイクもうすぐ来るらしいよ」
「いってきます」

玄関で暫く待っているとエンジン音の無いバイクが停車した。

「こんばんは、セルティ」
『××!?何故此処にいる!?折原臨也はどうした!?まさかまた売られたんじゃないだろうな!?』
「おちついて。うられてないから。あずかってもらってるだけよ」
『そ、そうか…それなら良いんだが…』
「セルティ、かにある?」
『ああ、持って来たぞ』

発砲スチロールを取り出し、手渡す。

『持てるか?』
「うん、だいじょうぶ」

それじゃあまたね、と別れを告げて粟楠会事務所へ入る。

「あかばやしさん、かにもらってきましたー」
「偉い偉い」
「こどもあつかいしないでくださいよっ」
「はは、ごめんよ」

赤林は××から蟹を受け取った。

「あかばやしさーん、することないですかー」
「蟹の調理手伝ってくれるかい?」
「おまかせあれー」

今晩の料理は蟹鋤鍋だ。

「蟹味噌は四木さんが食べるから取っておいてね」
「はーい」

こうして夜は更けていく。



再び訪れる、ほんの少しのさよなら


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