目を覚ますと、そこは見知らぬ真っ白な天井だった。
上半身を起こすと、足首と胸元が痛む。
「お目覚めですか、姫」
何時から居たのか、スーツを身に纏った色眼鏡をした男が壁に背を預けて腕組みをしていた。
「私は赤林と申します。当面、貴女のお世話をさせていただく事になりました。よろしくお願いしますね」
「かりは…つくりたくない…です」
「もっと気楽にして良いんですよ?」
「あなたたちが…かくまってくれたことについてはかんしゃしてる。けれど…これいじょうまきこむわけにはいかない…」
赤林は少女に近寄り頬を軽く、ぺちん、と叩いた。
「少しは大人に頼りなせぇ」
「……ん、」
小さく頷き、ベッドからそろそろと足を出す。
「いつまでかくまってくれるの?」
「ほとぼりが冷めるまで、ですかねえ」
「そんなの、ずっとよ」
少女は忌々しげに下唇を噛んだ。
赤林は少女の頭を優しく撫でる。
「貴女は気にせず療養していれば良い。さあさ、これに着替えてくんなせい」
袋を手に、それを手渡す。ガサガサと音を立てて袋を開き、少女は目を丸くした。
「おなじブランド…だめよ、うけとれないわ。こんなたかいもの」
「でもお好きなんでしょう?貴女が眠っている間に色々と調べさせて頂きましたよ。指紋からDNA鑑定、出生や今までの事を」
「こわく、ないの…?」
「怖くなんてありませんとも。寧ろ愛しいくらいです。直に貴女を追って1人の男がやってきます。綺麗な服を身に纏っておきましょう。それとも着替えさせて欲しいですか?」
「……じぶんで、きがえる…」
そう言って纏っている服を脱ぎ始めた少女に赤林は、外に居ますからね、と一声掛けて出て行った。
「へんなひと…」
それが少女の赤林に対する第一印象だった。
──田中太郎さんが入室されました──
【ばんはー】
《太郎さん、こんばんは☆》
[ばんはー]
{こんばんは}
【あれっ?今日は罪歌さんも居るんですね。お久し振りです】
《太郎さん、過去ログ読みました?》
{すみません}
【まだです。…って罪歌さん、謝らないでくださいw】
[で、都市伝説の新たな情報って?]
《フフフゥ!今から貼付するのでそれを見てください!》
──画像がアップロードされました──
《グロテスクなので注意してくださいね☆》
【うわ、何ですかこれ。甘楽さん、注意遅いですよ!】
《てへっ☆》
{怖いです}
[この女の子、無傷ですか?]
《セットンさん、よくぞ聞いてくれました!如何にもその通りです!》
【この女の子がまさか例のゾンビ?】
《ピンポンピンポン大正解ー!そうなんです。この少女が都市伝説のゾンビちゃんらしいのです!》
【らしい、とは?】
《私もこの画像は掲示板から取ってきたので詳しくは分からないんです…》
内緒モード【嘘ですよね?】
内緒モード《まあね。何にせよ探してるのは事実だ。ダラーズでも呼び掛けてやってくれないかな?》
内緒モード【嫌ですよ。ダラーズが動くような案件ではないじゃないですか】
内緒モード《そうでもないさ。まあ、動いてくれないなら俺の情報網で探し続けるよ》
内緒モード【そうしてください】
{不気味ですね}
[そうですねぇ…]
《あっ、私、これからバスタイムなので落ちますね!》
[乙です]
【お疲れさまです】
──甘楽さんが退室されました──
「さて、どう動いてくれるか。楽しみだなあ、楽しみだなあ!」
くるくると椅子を回転させながら、高らかに笑った。
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