本的な原因について

サバナクロー寮に向かう途中、ラギー先輩は色んな人に声を掛けられていた。
人気者だなぁ…と思いながら人が近寄る度に涙を流して、ハンカチでそれを拭う。

そういえばボクってサバナクローの人たちのこと、どう思ってるんだろう。

ふと思い、改めて考えてみる。
ラギー先輩に対しては、当たり前のように泣いてしまったので苦手意識は皆無である。
ジャック先輩は顔怖いけど優しいイメージあるし、レオナ先輩も以下同文。
結論。あ、これ泣くわ。
泣かなかったらそれはそれで失礼なんだけど、ワンチャン ビビってて涙が出ない説あってほしい。

そもそも何で「涙」なんだろう。
電子データが見れるというメリットに相反する為につけられたデメリットなのだろうか。
いやいやいや、他に何かあっただろ…!
たとえば感情がしぬとか、ケラケラ笑ってる陽気な人間になるとか……、どっちも嫌だけど。
神様とやらの気まぐれでしかない気がしてきた。

ただひたすらに、ボクが不幸なだけである。

「ガッくん?」
「うへぁ!な、なんでしょう…」
「着いたッスよ」
「……え」

早くない?
もうそんなに歩いた?

「シシシッ、そんなに緊張しなくていいッスよ」
「無理言わないでください…」

そんなにボクの神経図太くないです。
そのままラギー先輩に着いて歩くと広々とした廊下に出た。

「こっちッス。レオナさん今は居ないと思うんで先にジャックさんとこ行くッスよ」

レオナ先輩、中庭とかでハロウィーンの準備サボってるんじゃないか…?
ストーリーいまいち把握出来てないから分かんないけど!

「ジャックさんって…怖い人ですか?」
「怖い?まさか。めちゃくちゃ優しいッス!」
「そうですか…安心しました」

あはは、と笑って知らない振りをしておく。
そう、ボクは此処の人達とはあくまでも初対面なのだ。
すぐに名前を呼んだり、そんなうっかりは許されないわけで…。

「誰だこいつ」
「うわっ!レオナ・キングスカラー!!」

突然 姿を現したその人に向けて、思わず声を張り上げてしまった。
ボクの大声に目を見開くレオナ先輩。

……んぐぅ…言ってるそばからやらかした…!!
フラグ回収が秒!!!
オタク、すぐキャラのことフルネームで呼ぶから!
少なくともボクがそうでした…!!

「何でこいつ俺の名前知ってんだ。ラギーか?」
「フルネームは言ってないッスよ〜」
「……」
「……あはは…。……さようなら!!」

その場から一目散に逃げ出すボク。






しかし。

「逃がさねぇ」
「あででででで!!頭もげる!取れちゃう!!」

がしっと思い切り頭を掴まれ、逃亡失敗。

そんな、物掴むみたいに扱わないで!
頭って人体の重要なパーツですからね!?

「に、逃げないので離してくだしあ…ひぃい…」
「ラギー、こいつカイワレ大根の分身か何かか」
「似てるッスか?」
「気味が悪いところがそっくりだ」

ありがとうございます!!
ボクにとってはご褒美です!

このままでは頭が球根のようになってしまいそうだったので、懇願して手を離してもらった。

「で?」
「ええと…学園長が寮長と副寮長の名前くらいは覚えておいた方がいいですよ、って言ってたので…」

疑いの眼差しでボクを見るレオナ先輩。
そりゃあそうだよなぁ。
初対面でいきなり自分のフルネーム叫ばれたら誰だって怪しむに決まってる。

そこまで考えてボクは涙を流していないことに気付いた。
苦手意識はないと思っていたのに、泣いていないという事はそういう事なわけで。
し、失礼極まりないぞボク。
泣け、泣くんだ…!
強引に涙を流そうと、ぐしぐしと目元を擦る。
それを慌てて止めてくれたラギー先輩。

「何してるんッスか!目赤くなっちゃいますよ!?」
「だってぇ…」

こちとら内心は号泣してるんだよ、表面に出ないだけで。

「話はわかった。あー…火曜日のガキ」
「そ、そんな…ボクが一週間の火曜日担当みたいに言わないでください…」
「名前知らねぇ」
「ガクです」
「何処の何年だ?」
「オンボロ寮住みの一年です…」
「ああ、お前が噂の」

だから噂ってナニ!?
ボクの予想ではその噂って、暴言並べられてるだけのような気がするんですけど!
メンタル弱いのでチクチク言葉やめてください…!

「もう!行きましょ、ラギー先輩…!」
「えっ、はいッス…じゃあレオナさん、準備サボっちゃ駄目ッスよ」

無言で去りゆくその背に、あっサボる気満々だ、と察したのであった。






暫く歩き、辿り着いた部屋の前。
扉をノックをすれば彼が姿を現した。

「ジャックくん、この子が例の二人目ッス!」

見上げれば、怖そうな威圧感のある顔。

「ひぇぇ…あの、ボク、ガクと…申しますです…よろしくお願いしまふ…」

おどおどしながら言葉を噛みつつ、自己紹介をする。
じろじろと全身を舐めまわすように見つめられ、思わず目をふよふよと泳がせた。
ジャックさんは手を差し出して、

「…サバナクロー寮 一年 ジャック・ハウルだ」

と静かに挨拶してくれた。

ジャックさん、めちゃくちゃ良い人だな!!
確かプロフィールには”硬派な不良で他人と馴れ合うことを嫌う”って書いてあった気がするんだけど…………あ、そっか。
ラギー先輩の紹介だからだ。

ポン、と手を打って納得する。

ありがとうラギー先輩!
嬉しくてつい涙が……な、なみ…涙が出た!ボク泣いてる!

「うっ…ぐす…」
「何故 泣いているんだ」
「だいじょぶ…これは嬉し泣きなので…多分、すぐ止まります…」
「え?それってオレの時は嬉し泣きじゃなかったってことッスか?」
「嬉し泣きに決まってるじゃないですかぁっ…!」

痛いところを突くんじゃないよ。

泣きながら咄嗟に誤魔化せば、それならいいッス、と言ってくれた。
涙が止まらぬボクを見かねて、ジャックさんが頭を撫でてくれた。
大きな手がボクの髪をそっと優しく混ぜるように撫で、なんだか心がほっこりする。

「泣くのは一生に五回までにしておけ」
「………それを言うなら、泣くのは一生に三回では…」
「そうだったか」

天然かよ。
初見と印象違って、かわいいなぁ。
この解釈違いは美味しくて有りだ。
こういうのを世話焼きお兄ちゃんタイプって言うのだろうか。
兄貴いないから分からないけど。
あれか、ヤンキーが小動物に好かれる、みたいな。
つまりボクが小動物…?

ハンカチで涙を拭って、彼の手をそっと握り返した。

「ハムスターは…美味しくないですよ…」
「何の話だ」



根本的な原因について

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