ワタリ達とガレキ達が短い時間に情報や薬やらの売り買いを終え、ワタリ達がこの山を発てば、暗くなった山に響くのはガレキ達が焚火を囲み雑談している声。
その声をギンコと帝江が焚火から離れた木の根元に座り込みながら遠巻きに聞いている。
先程、ガレキがギンコの元に来て皆と話さないかと誘ってくれたが、帝江が後少しで眠りそうなところだったので、気持ちは有り難かったが、帝江が眠るまでは申し訳ないが遠慮させてもらった。
そしてギンコは視線をガレキ達から眠りそうになりながらも寝ない帝江に移す。目はうとうとしているように見える。普段からぼうっとしているというか、眠そうというか、判断がつきにくい表情をしているため、定かではないが、ギンコにはそう見えた。
しかし帝江は視線を森の中に遣る。
(空の次は森か…)
ぼんやりとギンコはそんなふうに思った。
「帝江…、眠いなら寝てもいいんだぞ?」
ギンコが帝江の顔を覗き込み小さな声で呟けば、ギンコを見上げた帝江がゆるりと首を横に振る。
今日は些か不機嫌に見える帝江にギンコは小さくため息を着いた。
しかし今までの事を思い出しギンコはやれやれと木の幹に寄り掛かる。
化野と別れてからすぐイサザに会って…懐いた矢先にワタリの皆…それからガレキにその仲間達…。
人見知りなどしないと思っていたが…たとえそうであったとしても、表情に出ないだけで、口にしないだけで…というか言葉拙い帝江は訴えることが出来ないだけで、帝江は帝江なりに緊張していたのかもしれない。
そうなら不満がいい加減溜まってきてるのだろう。と考えればこれくらいの反抗は可愛いもんか…と考え目を閉じた。
静かになったギンコに帝江が気付き見上げると…
閉じた瞼。ゆっくり上下しているギンコの胸。
「……ぎんこ?」
小声でもなく話し掛けるような声で呼び掛けてもギンコの目が開かれることはなかった。
眠ってしまったギンコに帝江はギンコの前に座り込みジッとその顔を見上げた。
──サァ…
森の方から風が吹き抜ける。
その風を身に受け、帝江はギンコから森の方へと視線を移す。やがて焚火を囲っているガレキ達を見つめる。そしてまたギンコへ。
顔は相変わらず無表情だが、どこか困ったように何かを言うか言うまいか躊躇しているようだったが、帝江はギンコの手に自分の手を重ねると、帝江は立ち上がり、ギンコの元から離れ木々の奥へと歩いて行った。
ふと振り返ると、火に照らされているガレキたちが見えた。ガレキは大人たちに陽気な話の合間に軽く小突かれたりして無邪気な笑顔を浮かべている。
帝江は胸元にある首飾りを拾い上げ、視線を落とす。
すると再び風が吹き過ぎ、帝江は顔を上げ、再び歩き出した。
「お待ちください」
しかし、重低音の声が響き、帝江は足を止めそちらへ振り返る。
木の陰からそれは現れた。ガレキたちの中に居た、ガタイがいい初老の男。
男は口に弧を描き、帝江を見下ろしていた。呼び止めた口調は恭しくあったが、その目は……
「───我らが帝江よ…」
支配する側の人間のそれだった。