しどろもどろ


04


「よっ」
「こんにちは…」


 手を上げて挨拶するルフィさん。私もルフィさんの後ろから挨拶をしてみた。


「また来たのか。海賊の勧誘なら断ったはずだぜ」


 いや、まあ、そうなんですけど…。


「俺はルフィ!此方は#name1#!縄解いてやるから仲間になってくれ!」
「話聞いてんのかてめェ!」
「すみません…!」
「お前じゃねェよ!」


 ルフィさんが勝手言ってすみません…!


「俺にはやりてェ事があると言っただろう。誰が好んで海賊なんて外道になるか」
「別に良いじゃんか。お前元々悪い賞金稼ぎって言われてんだから」
「……世間でどう言われてるかは知らんが、俺は俺の信念に後悔する様な事は何一つやっちゃいねェ!これからもだ。だから海賊にもならねェ!」
「知るかっ!俺はお前を仲間にするって決めた!」


 ルフィさんはプンプン怒っている。


「勝手な事言ってんじゃねェ!」
「すみません…!」
「だからお前に言ってねェよ!」


 だってルフィさんが怒られるとつい。


「おい!#name1#を苛めていいのは…」
「何時まで言うつもりだお前!」


 わ、なんか新鮮な反応にちょっと感動した。


「お前、刀使えるんだってな!」
「!……フン…、ああ。何かに体をくくりつけられてなきゃ一応な」
「刀は?」
「取られたよ、馬鹿息子に。命の次に大切な俺の宝だ…!」
「へーー、宝物か。そりゃ一大事だな!」


 あ、この口調…


「よし!あのバカ息子から俺が刀を奪ってやる!」
「何!?」
「そして俺から刀を返して欲しけりゃ仲間になれ」
「質悪ぃぞてめェ!」
「じゃ行ってくる!#name1#!そいつの縄切っといてくれ!」


 よく知らない人と一緒に置いて行かないでほしい。


「おい待て!!」


 返事も聞かずにルフィさんは走り出してしまった。


「基地に乗り込むつもりかよ。バカかあいつは…!」
「すみません…」
「だからなんでお前が謝るんだよ」
「すみま……」


 もう謝罪が出てきて、途中で切り、鞄からナイフを取り出して縄にかけた。


「おい、やめとけ、さっさと逃げろ」
「でも、ルフィさん行ってしまいましたし……あの…聞いてもいいですか…?」


 一度ナイフを離して話しかける。


「なんだよ」
「貴方の、そうまでしてやりたい事って、なんですか…?」


 気になった。真っ直ぐな目で言う彼の、やりたいこととはなんだろう。


「世界一の大剣豪になることだ」


 驚いた。
 恥ずかし気も無く、言い切った彼に。


 ──ガシャァン!!


 すごい音がして、ハッと基地を見ると、石像の一部が落下して砕けていた。
 ルフィさん…大丈夫だろうか。石像が落ちてきた屋上を見上げると、人影が見えた。こっちに気づかれた。まずい。


「#name1#さぁーん!あれ!?ルフィさんは…」


 コビーさんがやってきた。一応簡単に説明する。


「ええ!?ルフィさんが基地の中へ?またムチャクチャな事を…!!」
「それより、向こうに気づかれたみたいです…!コビーさんは一旦塀の外に戻ってください…!」
「ええっ!?じゃあ早く縄を解かないと!」
「いいんですか…?」
「ええ!もちろんです!」


 そう言われて少し驚いた。コビーさんにナイフを渡し、基地を見上げる。すぐに人が来る。もしかしたら狙撃されるかも。


「おいっ、いいのか!おれに手を貸せば、てめェらが殺されるぞ」
「あなたに捕まる理由はない筈です!!ぼくはこんな海軍見てられない!!ぼくは正しい海兵になりたいんです!!ルフィさんが海賊王になるように!!」
「何?か…海賊王だと…!?意味わかって言ってんのか」
「えへへへ…ぼくも驚きましたけど、だけど本気なんです。彼は、そういう人です!」
「いやそれよりおまえらさっさと逃げろ!あいつらが下りてくるぜ」
「いえ!!#name1#さんだけ先に逃げてください…!ぼくは、あなたの縄を解かなきゃ…!」


 怯えつつも縄を解こうとしてくれる。そっちはコビーさんに任せ、私は基地の方を見据える。人影は引っ込んだみたいだけど、また出てくるかもしれない。


「おれはいいんだ。一ヶ月耐えれば助かるんだから。早く行…」
「助かりませんよ!!あなたは三日後に処刑されるんです!!」
「何言ってやがる…!おれはここで一ヶ月生き延びれば助けてやるとあのバカ息子が約束を…」
「そんな約束!!初めから守る気なんてなかったんです。だからルフィさんはあなたにかわってあいつを殴ったんだ…!真剣に生き抜こうとしてたあなたを踏みにじったから!!」「…!!な…何だと…!?」
「あなたに海賊になれとまではいいません。だけどお願いです。ルフィさんと#name1#さんに力を貸してください」


 縄は解けた。後はルフィさんが刀を見付けてくれれば…と思ったけれど、入口から出てきたのはルフィさんではなく海兵たちで。


「来たぁああ!!」


 コビーさんが絶叫する。


「二人共私の後ろに…!」
「ふざけんな!」
「そこまでだ!モーガン大佐への反逆につき、お前達三人を今この場で処刑する!!」


 大勢の海兵が、一斉に銃口を向けてくる。怖い。足が震える。


「基地を取り囲め!あの麦藁小僧は絶対逃がすんじゃねェぞ!」


 大きな声。海兵達の後ろに立つ、男の人。


「面白ェ事やってくれるじゃねェか……。てめェら四人でクーデターでも起こそうってのか?」


 この人が、金髪の人の父親でモーガン大佐だろう。


「ロロノア・ゾロ…。てめェの評判は聞いてたが、この俺を甘くみるなよ。貴様の強さなど俺の権力の前にはカス同然だ…!構えろ!」


 ガチャリ、銃を構えられた。


「『風よ、その身を揺らせ。おまえに触れる強欲な手を、おまえの枝葉で刺し刻め』───『風刃ふうじん叢雨むらさめ』」


 ──バキンッ、バキバキッ…


 かまいたちのようなそれが、海兵たちが構えた銃を破壊した。


「なっ、なんだ!?何が起きた!」
「わかりません!銃が勝手に!」
「#name1#―――!!」


 窓からルフィさんが飛んできた。三本も刀背負ってるけど。


「んなっはっはっはっは!!どうだ#name1#はつえーだろ!」


 腰に手を当てて胸を張るルフィさん。
 まさかおまえが?みたいな目でゾロさんが見てくる。パッと逸らしてしまった。


「る、ルフィさんやめてください…」


 私は小声で言う。でもルフィさんが戻って来てくれてすごく安心した。無意識にルフィさんに近づいている。


「てめェら…一体何者なんだ!」


 ゾロさんが目をむいている。


「おれは海賊王になる男だ!!そんで#name1#は俺の副船長だ!」
「副船長になっちゃったんですか…!?」


 思わずツッコむ。


「ほら!お前の宝物どれだ?」


 そう言って、刀を三本、ゾロさんに見せたルフィさん。


「わかんねぇから3本持ってきちゃった」
「3本ともおれのさ…おれは三刀流なんでね…」


 三刀流…?四刀流なら会った事あるけど…両手足に一本ずつの。


「ここで俺たちと一緒に海軍と戦えば政府に楯突く悪党だ。このまま死ぬのとどっちが良い?」
「てめェは悪魔の息子かよ……まァいい…ここでくたばるくらいならなってやろうじゃねェか…海賊に!!」
「やったァ!仲間になってくれんのかよ!やったぞ#name1#!」
「喜ぶのはこの状況をどうにかした後にしてくれませんか…!?」


 もう怖いんですけど…!


「分かったらさっさと刀を寄こせ!」


 さっそく刀で斬りかかって来た海兵達。銃は私が壊したんだった。その全員を、次の瞬間にはゾロさんが止めていた。


「おーっかっこいいっ!!」


 両手と、それから口に刀をくわえている。なるほど、これで三刀流か。


「てめェらじっとしてろ。動くと斬るぜ」
「「「ひい…!」」」
「……っ」
「……お前まで固まってどうするんだ」


 呆れた様に、少しだけ笑われた。けど、ルフィさんを見た途端に顔つきが鋭くなる。


「海賊にはなってやるよ……約束だ!海軍と一戦やるからには俺も晴れて悪党って訳だ」


 あ、私も海兵の銃壊したんだった。そろ、と視線を逸らす。


「だが良いか!俺には野望がある!世界一の剣豪になる事だ!こうなったらもう名前の浄不浄も言ってられねェ!悪名だろうが何だろうが、おれの名を世界中に轟かせてやる!!」


 轟かせてどうするのだ。
 ひっそり静かに暮らしたい。


「さそったのはてめェだ!!野望を断念するような事があったら、その時は腹切っておれに詫びろ!!」
「いいねぇ!世界一の剣豪!!海賊王の仲間ならそれくらいなって貰わないと俺等が困る!!なっ?#name1#?」


 もう勝手にしてください…。
 副船長に認定された私は何にならなければならないのだろう。…違う、まず私は一緒に行かない。


「ケッ、言うね」


 二人が話していたけれど、痺れを切らしたモーガン大佐がまた怒鳴る。


「何ボサッとしてやがる!!とっととそいつらを始末しろ!!」
「しゃがめゾロ!!」


 ゾロさんは言われたままにしゃがむ。


「ゴムゴムの…鞭!!」


 ──ズバァン!!


 ルフィさんの足は鞭のように海兵を吹き飛ばした。


「やった!すごい」


 コビーさんが声を上げる。


「てめェは一体…!」
「おれはゴム人間だ!」
「……ゴ…ゴム人間!?じゃああっちの女も…!」


 海兵の視線がこっちに飛ぶ。うぅ、だから目立つのは嫌なんだ。


「た…大佐…!あいつら…我々の手にはおえません!!」
「ムチャクチャだ!あんな奴ら…!」


 海兵は口々に弱音を吐く。


「大佐命令だ。今……弱音を吐いた奴ァ……首を掻っ斬って自害しろ」
「「「!!!」」」


 何を言っているのだろうか。あの人は。


「このおれの部下に弱卒は要らん!!命令だ!」
「「……!!」」


 ──ガチャ…


 なのに海兵達は大佐の言う事に反論せず、刀を首に添える。


「どうかしてるぜこの軍隊は…!!」


 ゾロさんが刀を構えて動き出そうとした。
 私もまた風で刀を折ろうとするけれど、折った衝撃で刃が首を斬るかもしれないと思うと尻込みしてしまった。
 横をルフィさんが走っていく。


「おれは海軍の敵だぞ!死刑にしてみろ!!」


 ──ドゴォッ!!


 ルフィさんは大佐に殴りかかった。それを見て、海兵たちが首から刀を離していく。


「ルフィさん!!こんな海軍つぶしちゃえ!!」


 コビーさんがそう叫ぶなか、大佐とルフィさんの戦いは続く。


「身分も低い称号もねェやつらは…!このおれに逆らう権利すらない事を覚えておけ。おれは海軍大佐、斧手のモーガンだ!!」
「おれはルフィ!よろしくっ」


 大佐が斧を振るって攻撃するが、ルフィさんはそれをすべて避け、逆に蹴り飛ばす。
 戦いは一方的に思えた。でもぎゅっと両手を握り合わせてそれを見守った。


「なにが海軍だ!コビーの夢をブチ壊しやがって…!!」


 ルフィさんが転倒したモーガンさんの胸ぐらを掴み、殴ろうとした時だ。


「待てぇ!!」


 金髪の人の声がした。


 ──ガン!!


 が、ルフィさんは気にせずそのまま大佐を殴った。


「待てっつったろ!アホかこのォ!!」


 金髪の人がコビーさんに銃を向けている。


「こいつの命が惜しけりゃ動くんじゃねぇ!!ちょっとでも動いたら撃つぞ!」
「ルフィさん!!僕は!!ルフィさん達の邪魔をしたくありません!!死んでも!」


 銃口を向けられ、肩が震えているのに、必死にそう伝えてくるコビーさん。


「ああ……知ってるよ」


 するとルフィさんは金髪の人の方を向き、腕を回して殴る準備をする。


「諦めろバカ息子。コビーの覚悟は本物だぞ!!」
「おいてめェ!!動くなっつったろ!!撃つぞ!!」


 ──ヒュカッ


 風で金髪の人が持っている銃を切り落とす。さっきの見てないのかこの人。


「ルフィさん後ろ!!」


 コビーさんが叫ぶ。ルフィさんの後ろには大佐が……しかし、ルフィさんはゴムゴムの銃で金髪の人を殴り、


「ぶほっ!」
「ナイス。ゾロ」


 ──ドス


「お安い御用だ…船長」


 大佐の方はゾロさんが斬った。
 尻餅をついたコビーさんの所へ小走りに向かう。


「コビーさん…!大丈夫ですか…?」
「え、ええ。大丈夫です…!」
「た…大佐が負けた……」
「モーガン大佐が倒れた!!」


 海兵たちがざわつきだす。


「まだ俺達を捕らえてェ奴ァ名乗り出ろ!」


 ゾロさんの言葉に顔を見合わせた海兵たちは…


「やったァーーーっ!!」
「解放された!!」
「モーガンの支配が終わったァ!!」


 武器を放り投げ、万歳をしたり、抱き合ったりしながら思い思いに喜ぶ。


「なんだ、大佐やられて喜んでやんの」
「……皆モーガンが怖かっただけなんだ…!!」


 ──ドサッ


「ゾロ!?」
「「ゾロさん…!?」」


 ゾロさんが倒れて、慌てて駆け寄る。


「ゾロさん…!?」


 ──ぐーーきゅるるるる…


「ぇ…」

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