望まぬ再開
10ページ / 29ページ
【side:依紅】
準備と打ち合せのために宝祥と秋津を
特別音楽室に追いやって
私は水夏ちゃんを連れてコートにむかっていた。
秋津の彼女のはずの水夏ちゃんには今日初めて
会ったワケなんだけど、
彼女、実は高校生で、実は彼女じゃなかった。
(『妻です』って言うセリフを聞いた時の
秋津の顔ったら…
言い表わせないくらい嬉しそうだったけど…)
だけど。
同じような反応が見れると思って聞いた
結婚の理由。
答えは想像とは違い
『家を出たかったから』だった。
(この子に何があったんだろう…)
そう思うに十分な返事。
この結婚は何かあるのかもしれない。
「あれ?依紅さん?」
そんな事を考えながら歩いていた
コートへと向かう道。
懐かしいレギュラージャージを着た
男の子と出会った。
彼、名前を−平沢将貴(ヒラサワ マサキ)−と言う。
「─── ッ !!」
(水夏ちゃん?)
彼を見た美夏ちゃんが一瞬顔色をかえたような
気がしたけど、私が見た時には少し俯きがちに
顔を背けただけで、至って普通だった。
「どうしたんですか?
あ、もしかして依紅さんも送別会に?」
「うん。平沢くん、レギュラーになったんだ?」
「はい。この夏からです」
「へぇ…すごいね。頑張ったんだね」
「ありがとうございます!」
桜華テニス部はたくさんの人数を抱えていて、
実力がないと決して上へは上がれないという
完全実力主義な部活だ。
レギュラーになれたという事は
頑張った証拠だった。
だけど
努力を惜しまない堅実家、という私の中の
彼のイメージが崩れたのは次の瞬間だった。
「あれ?もしかして…水夏?」
そう。
水夏ちゃんに気づいた瞬間に、
彼の態度はそれまでと一変したのだ。
ALICE+