真実
16ページ / 29ページ


背中を丸め、声を殺して泣く水夏は、

背後に立つその存在に気づいていなかった。


彼は指輪を握り締める両手にそっと触れ、

びくりと体を震わせた水夏を抱き締めた。


「今更何を言うん。

 俺は初めから水夏の事好きやったで」


(────── !?)


「ゆうき…」

「ん?」

ごめん…なさい…


消え入りそうな声で謝る水夏。

侑希は水夏を抱き締めたまま頭を撫でた。


「何で謝るん?何も悪いことしてへんやん」


返事はなかった。


「水羽の事なら心配ないってゆうたやろ?

 俺の言うこと、信じられへんかった?」

「でも…」

「水夏。こっち向いて?」


侑希が腕を放す。しかし水夏は俯くだけで

侑希の方を向こうとしない。


「み〜か?」


再び名前を呼ぶと、俯いたままだが、

ゆっくりと体を反転させた。


侑希は再び水夏を自分の腕の中におさめる。


「この結婚の事、水夏は俺との契約か何かやと

 思てるかもしれんけど、俺はそんな事1度も

 思たことないんやで」


水夏は驚いて顔をあげた。


「こんな風に泣かせてまうって分かってたら

 早めに言うとくべきやったかな?」

「ちがっ…これは…」

「違わんやろ。俺に関係ない事で泣いとんの?」


そう言って涙をぬぐう。


「ただな…もしかしたら水夏はこの先

 普通の恋愛をするかもしれん。

 それを考えたら…今まで言えんかった」


侑希がこんな事を考えていたなんて、

水夏は思っても見なかった。


「プロポーズしたんは水夏の願いを

 叶えるためだけやない。


 水夏を手に入れる機会を、

 俺が逃したくなかっただけや」


これが、出会ってから1年。

結婚生活が始まって3ヵ月。


初めて口にした、侑希の本音だった。




Avant / Ensuite


* 栞 *

* 章 top *


* おハナシ *
ALICE+