平穏が奪われる予感
日差しが暑くなってきた昼下がり、雲一つない青空に高く上がるバドミントンのシャトルを見上げ、フームは目を細めた。
弧を描き落ちていくシャトルの遥か上、太陽に中に見慣れない大きな鳥のような影が見える、ダイナブレイドだろうか。
もしかしたらウィスピーの森の新しい仲間かもしれないと心をはずませ、鳥がゆっくりと西へ飛んでいくのを見送ると、
すぐそばでブンとホッヘのラリー回数が新記録になり盛り上がりを見せる子供たちに視線を戻した。
本当なら、広場で遊ぶマナーとしてはしゃぎすぎないように声をかけるべきなのだろうが、
広場でやっと遊べるようになった喜びも理解できるので、わざわざ水を差すようなことは言わなかった。
「なにもかも、ってわけにはいかないけど…本当にみんながんばったわ」
かつてホーリーナイトメア社の襲来により、
村人の多くは家財や財産を失ったし、シンボルとして愛されていた木はなくなってしまった。
それでも建物はすっかり元通りだし、村に活気も見え始めている。
吹き飛んだガラスや瓦礫の破片が誰かの足に刺さるんてこともすっかりなくなり、
こうやって子供たちが駆け回って遊べる日常が戻ってきたことがフームには嬉しかった。
清々しい気持ちで村の復興を感じていると、すぐ隣にカービィが足を浮かせるように座る。
「あら、カービィもう遊ばないの?」
「ぽーよ」
どうやら我らが星の戦士はバトミントンにはさして興味ないらしい
フームは肩をすくめて、その戦士らしからぬ能天気な背中に微笑みかけると、またバトミントンを見学する。
しばらく子供達を眺めていたが、村ではあまり聞きなれないカツカツ硬い足音が近づいてくるのが聞こえ視線を移した。
「あら、ブレイドじゃないどうしたの?」
駆けて来たのは、城の従者ブレイドナイトだった。
鎧のせいで表情のわからないが心なしか焦ってる様にも見える。
「カービィ殿はすぐに城へっ」
「急にどうしたのブレイド」
「ぽーよ?」
急ぎのようだが、本題を言わないブレイドに対して、2人は小首を傾げて返した。
「ブレイドじゃん、どうしたんだよ」
村では出会わない顔見知りにブンもやってくる。
ブレイドは遠巻きにこちらを見ているホッヘ達を一度見、フーム達だけに聞こえるように声をひそめた。
「城にホーリーナイトメア社の宇宙船が現れました」
「なんですって!?」
ガバリ立ち上がったフームの顔には絶望の色が見えたが、慌てふためきはしなかった。
持ち前の判断力とトラブルへの場数経験のおかげだろう。
「わかったわ!行くわよカービィ!」
「ぽよ!」
「ホッヘ!わりぃ、俺達抜けるっ」
もう帰っちゃうの?と不思議がるホッヘ達の声を背中で受け、4人は走った。
行き慣れた道がやけに長くもどかしさを感じる。
「なんで…!」
村の復興もやっと終わったのに…っ!
いつまでも残っていた、木々の焼けた臭いやっと消えたのに…!
どうして今になって!
ナイトメアがやってくるのよっ!!
村一丸となってやっと手に入れた平穏が奪われる不安に、フームは足を速めた。
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