平穏が奪われる予感

どれくらい経ったがわからないが、鼻につく嫌な臭いに目が覚めた。
ハッと顔を上げると、広がりきったエアバックが目に入る。下をめくると、もう操作パネルとは呼べない代物になった機材が配線をむき出しにバチチと火花を飛ばしていた。

エンジンが停止してしまっているのだから火花も時期に収まるし、船の構造上燃料が爆発する心配はないのだが、〇〇〇は異様に怯えすぐさま営業船から逃げ出そうとする。


「ぬ、抜けないッ…!」

しかし、不時着の衝撃でバックルとイスが変形してしまい、ベルトを外すことができない。

「なんでぇ…!抜けない…なんで…」

涙で視界が歪む、焦れば焦る程バックルを外すことが困難になっていくのはわかっているが、身体が言うことを聞かないのだ。

怖い、もし火花がどこかに引火したらどうしよう…!焼け死ぬのは嫌…!
怖い…助けて…!


「助けて…おとうさ……!」

ベルトの間から脚を抜けないかと、操縦席から身を乗り出して暴れていたら、見知らぬ男と目が合う。
まさか人がいると思わなかったので、一瞬思考が止まる。

ソードもソードで、操縦席にいた女と目が合った途端、身体が動かせなくなる。
一触即発覚悟で乗り込んできたのに、泣きじゃくる娘が振り返るとは思ってもみなかった。

しばらくの間見つめ合い、どちらかともなく声をかけようとしたが、ソードの手に握られた剣を見た〇〇〇が目を見開く。

「ひっ!………」

「お、おいっ!」

小さく悲鳴を上げた〇〇〇の意識はまた遠のいた。

「(ナイトメア様……!)」


薄れゆく意識の中、なぜが最も敬愛する存在が頭に浮かぶ、
彼が故郷を買い取ってくれた日から守れらて来た平穏が、奪われいく予感がした。



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