忠義者シンパシー
あつい…
呼吸も出来なくなるほどの熱風に、少女は立ち止まる。
息も絶え絶えに来た道を振り返ると、そこにはもう道は見えず、真っ赤な炎が大きな渦を巻いていた。
炎を逃れる人々が少女を追い越していく。
「おとーさん…どこ…!」
少女はぐれた父親を探したが、悲鳴と怒号が満ちる街の中で、少女の声が誰にも届くことはなく、
群衆に押しのけられた少女は路地の隅に取り残されてしまった。
どうしたらいいかもわからず、ただ逃げ惑う人々を見送る。
阿鼻叫喚と化した街を眺め、ここはよくお話に聞く地獄なんじゃないかと現実逃避しながら呆然としている少女の足元に焦げ付いたタペストリーが燃え落ちて来た。
そこには、よく父親にねだって連れて行ってもらったパティスリーのイメージキャラクターが描かれていて、
ここが地獄ではなく、少女が住んでいる街なのだと思いしらされ、どうしようもなく涙が溢れた。
路地ですすり泣き続けていると、炎の渦から物音が聞こえ、
もしかして父が探しに来くれたのか、と少女は期待を込め視線を上げる。
しかし、その期待は簡単に打ちのめされた。
アイツだ
アイツが来た、口から炎を吐き出す姿を見て、少女は路地の奥に入り込み息をひそめた。
街を燃やす炎はより強くなり、黒い煙が立ち込める。
鋭い爪が炎に照らされ赤く揺らめいて見えた。
よく見ると爪に"何か"が突き刺さっている。
嫌な予感に、少女はそれから目を離せなくなった。
アイツは路地の影にいる少女になど見向きもせず、前方に逃げた民衆を追いかけ歩き出す
拍子に、だらりと垂れたそれが爪から抜け落ち地面に潰れ落ちる。
黒煙の隙間を睨みつけ、それがなんだかわかった時、少女は絶叫した。
◇ ◇ ◇
「…い、おい!」
肩を揺さぶられ、弾かれるように目を開けると、知らない天井を後ろに、兜をつけた見知らぬ男が自分を見下ろしていた。
息を切らせてその顔をじっと見つめる〇〇〇。
涙のせいなのか視界がぼやけるし、男の兜は目元しかあいておらず、その目元も暗く影が差していて表情が読み取れないが、
なんとなく自分を心配してくれているように見えた。
昔の夢を見ていたせいか、あの日路地で泣いていた時、父親が迎えに来てくれたらこんな風に心配してくれたのかな?なんてありもしないことを考えながら
〇〇〇は自分が営業先に不時着するという、ホーリーナイトメア社の顔に泥塗りかねない失態をしていることを思い出すまで、ずっと男の顔を眺めていた。
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