13
ユリはグリフィンドール寮に戻ると中は大騒ぎ状態だった。特に選手たちはたくさんの人に囲まれていた。時にウッドはパーシーに抱きついたり、アンジェリーナとアシリア、ケイティーはガールズトークの真っ最中でフレッドとジョージは悪戯グッズでさらに盛り上げた。しかし、そこにハリーの姿がなかった。さらにロンとハーマイオニーもいなかった。
「(どこにいったのかな)」
彼らがいないと分かったのでユリは談話室から出ようとしたら後ろからネビルに声かけられた。
「どこ行くの?」
「ちょっと図書館でも行こうと思って」
「こんなに盛り上がっているのに?」
確かに盛り上がっていた。だが、シーカーを務めたハリーと観客席でともに応援をしたロンとハーマイオニーがこの場にいないのであればユリとしてはちょっと盛り上がりが欠けていた。
「ユリも一緒に楽しもうよ!せっかくグリフィンドールが勝ったんだから」
「うーん...それもそうだね」
ユリは外に出るのを止めてネビルと一緒に大騒ぎの談話室にいることにした。しばらくネビルと話していると、先ほどまで悪戯グッズで場を和ませていたフレッドとジョージがユリのところへやってきた。
「「やあ、ユリ」」
彼らはユリの両サイドに座った。
「フレッド!ジョージ!」
「俺たちの試合どうだった?」
「もちろんかっこ良かっただろ?」
「うん!とてもかっこ良かった」
「そう言うわりには君はハリーばっかり見てたじゃないか」
「俺たちが気づかないとでも?」
「あら、バレちゃったか」
ユリは箒に乗ってても、案外観客席って見えるんだなと思った。しかし、そんなユリをよそにフレッドとジョージはどこか拗ねているようだ。
「ごめんね。次はちゃんと2人を見るから」
そんな2人に困ったように笑うユリは2人の髪を撫でた。髪を撫でられたフレッドとジョージはユリを挟むようにぎゅうっと抱きついた。今日はやけに甘えん坊さんな双子である。すると、ジョージが何かを思い出したように言った。
「なあ、ユリはクリスマスどうするんだ?」
「どうするって?」
「ほら、ママから手紙来ただろ。今年は俺たちをほっといてルーマニアにいるチャーリーに会いに行くって知らせに来ただろ」
「俺たちはもちろん残るよ。あと、ロンもパーシーもな」
そういや先日モリーからの手紙にこう記してあった───私たちはルーマニアにいるチャーリーに会いに行くわ。今年はパーシーとフレッド、ジョージ、ロンと一緒にホグワーツに残りなさいと書かれていた。もちろんユリも残るつもりでいる。
「私も残るよ」
「へえ、てっきりチャーリーから招待されていると思ったよ」
「意外だな」
「一応チャーリーに声かけられたんだけどね。でも、パーシーもフレッドもジョージもロンも残るって聞いたから」
「「ユリ!」」
またユリにぎゅっと強く抱きついたフレッドとジョージであった。
それから12月も半ばになりクリスマスが近づいてきた。ホグワーツは雪に覆われ湖はカチカチに凍りついていた。グリフィンドールの談話室や大広間にはごうごうと火が燃え上がっていたが廊下は氷のように冷たく風もガタガタと教室の窓を鳴らした。
「寒いよ...」
特にスネイプの地下牢教室はとても寒かった。吐く息が白い霧のように立ち上り出来るだけ熱い鍋に近づいて暖を取った。
「可哀想に。クリスマスなのに家に帰ってくるなと言われてホグワーツに居残るやつもいるんだね」
「可哀想なのは貴方の方だね、マルフォイ。せっかくのクリスマスなんだから家で過ごすよりもホグワーツで過ごす方がロマンチックでいいと思うのに」
やれやれと呆れた顔でドラコに言うユリ。ドラコは顔を真っ赤にして続けた。
「次の試合には大きな口の木登り蛙がシーカーになるぞ」
「ハリー、こんな人は無視しときましょ」
───それから間もなく魔法薬の授業が終わった。地下牢を出ると廊下は大きな樅の木が塞いでいた。木の下から突き出た2本の巨大な足とフウフウと大きな息づかいからハグリットが木をついでいることが分かった
「やあ、ハグリット。手伝おうか?」
「いんや、大丈夫。ありがとうよ、ロン」
「すみませんが、そこどいてもらえませんか?」
またもやドラコがクラッブとゴイルを後ろに引き連れてユリたちの元へきた。
「ウィーズリー、小遣い稼ぎですかね?君ホグワーツを出たら森の番人になりたいんだろう?ハグリットの小屋だって、君たちの家に比べたら宮殿みたいなんだろうねぇ」
「ロン!」
ロンは怒りでドラコの胸ぐらを掴んだ。ユリもドラコに腹が立ったが、今にも殴りかかりそうなロンをユリは止めようとした時───そこに運悪くスネイプがやって来てしまった。
「ウィーズリー!」
「スネイプ先生、喧嘩を売られたんですよ」
「マルフォイがロンの家族を侮辱したんでね。」
「そうだとしても喧嘩はホグワーツの校則違反だろう、ハグリット。ウィーズリー、グリフィンドールは5点減点。これだけですんでありがたいと思いたまえ。さあ諸君、いきたまえ」
ドラコ、クラッブ、ゴイルはニヤニヤして立ち去っていた。ロンは「覚えてろ」とドラコに言った。そのあとハリー、ロン、ハーマイオニー、ユリはハグリットが樅の木を大広間に届けるために着いていった。
「そう言えば、ハリー、ロン、昼食まで30分あるなら図書館に行かなくちゃ」
「?」
「図書館?休み前なのに?お前さんたち、ちぃっと勉強しすぎじゃないか?」
「勉強じゃないんだ。ハグリットがニコラス・フラメルって言ってたからずっとどんな人物か調べているんだよ」
「なんだって?まあ、聞け──俺が言っただろうが、ほっとけ。あの犬が何を守っているかなんてお前さんたちには関係ねえ」
「私たちニコラス・フラメルが誰なのか知りたいだけなのよ。」
「ハグリットが教えてくれる?そしたら、こんな苦労はしないんだけど...僕たちもう何百冊も本を調べたんだけど、どこにも出てないんだ。何かヒントをくれないかな。僕、どっかでこの名前を見た覚えがあるんだ」
「俺は何も言わんぞ」
「それなら僕たちで見つけなくちゃ」
そう言ってハグリットとユリを残して3人は図書館へ向かった。ユリは自分の知らないところでニコラス・フラメルについて調べているなんて少し寂しかった。どうして自分を頼ってくれないんだろうか──私は彼らのなんなのか、ただ頭の中でずっとそれを考えた。
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